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[コメント] IT/イット “それ”が見えたら、終わり。(2017/米)

よくあの原作を破綻させずにコンパクトにまとめられたものだ。それだけで感心出来る。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ホラー会の帝王と言われるスティーヴン・キングの諸作品は、その大部分が映画化されるというほど映画と相性が良いが、確かに映画として傑作と言われる作品も多々存在する。

 では、その原作で一番評価が高いのは?と考えるならば、恐らくそのトップは「IT」となるかと思われる。

 そして愛読者の一人として、私が最も好きな作品もまた「IT」である。

 この作品は最も脂がのった時期の作品と言われることもあるが、前半は少年達の友情とホラーの見事な融合で、ホラー版『スタンド・バイ・ミー』(1986)とも言われるが、重厚さはそれを遙かに超える。更に後半に至ると宇宙規模の広さを持った物語になり、しかもきちんと破綻せずに決着が付いてるところが本当に見事。

 前に映像化されていることを知った時にはレンタルで『IT イット』(1990)借りて観た。TMV作品だけに、前半後半合わせて合計4時間近く。割ときちんと映像化されていたが、凝縮しすぎと言った感じ。四時間あってもあの分厚い原作をまとめることが出来なかった。

 本作も『IT イット』の前半部は同じ程度の時間で作られたこともあって、たぶん同じく詰めすぎになるかと思ったのだが、案に相違し、かなり見事な作りになっていた。  これは演出の凄さのお陰。本来足りない時間を演出力でカバーしてみせた。それが本当に見事。

 はっきりジャンルとしてホラー映画を確立したのはアメリカだったが、世界中でホラーが作られることによって、お国柄で様々な系統のホラーが作られるようになっていった。その中でも突出したジャンルホラーは日本のいわゆるJホラーと、メキシコで作られたスパニッシュホラーが挙げられる。

 本作はそのJホラーとスパニッシュホラーの良いところを上手く融合させ、きちんとハリウッド映えするアメリカンホラーとして作り上げたところが上手い。

 Jホラーは怪談の要素をホラーに取り込み、徐々に近づいてくる幽霊描写が優れており、そこに謎解きを加えることで、人間側と怪物側の双方が歩み寄ってくる描写が醍醐味。対してスパニッシュホラーの場合、刺激しなければ怪物を目覚めさせることがないため、慎重に慎重を重ねて怪物の横を通り過ぎようとしたところ、何かの拍子に怪物を目覚めさせてしまい、それ以降悪夢のような追跡劇に移行するというパターンが多い。そのどちらも取り入れ、更にアメリカンホラーのびっくり箱のようなショック描写を加えることで緊張感をしっかり高めていく。

 その意味では完全に演出の勝利。

 それに本作でのペニーワイズは群を抜く怖さ。『IT イット』の時は分かりやすいピエロの姿だったが、ここでのスカルスガルドの常軌を逸したピエロの造形は見事すぎるほど。特にあらぬ方向を向いてるのに、しっかりこちらを補足して見ている目玉が特に怖い。あまりに見事にペニーワイズやったもんだから、既にアイコン化してしまってるくらい。最も新しいアイコン化されたモンスターと言えるだろう。

 そうなると、今度は続編を心待ちにしてる。決着編を早く観たいものだ。

(評価:★4)

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