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[コメント] スパイダーマン ホームカミング(2017/米)

これまでのスパイダーマンの作品を観てると違いが分かって面白い。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 これまでトビー・マグワイア版、アンドリュー・ガーフィールド版は、思春期の青年がノブレス・オブリージュをどう遂行していくかというテーマを持っていたのだが、本作は全く切り口を変えている。

 主人公のパーカーをより幼くさせ、ヒーローとして半人前以下の存在にさせてみたのだ。これはとても新鮮。

 本作のピーターは、高校生活を満喫する15歳という若さで、叔父さんの死に立ち会ってるわけでもないから、心に暗さがない。当然ノブレス・オブリージュなんてものを自覚もしてない。自分に与えられたスーパーパワーを解放させて酔いたいし、人助けは自分の良心だけに負う趣味でしかない。

 要するに強大な力を持ってしまったお子様というのが本作のピーターの立ち位置となる。確かに今までにないとても新鮮な設定である。

 ただこれだけでは単純に主人公が巻き込まれて暴れるだけの話になるため、その枷を付けることになった。

 それが先輩ヒーローとしてのアイアンマンの存在である。

 アイアンマンことトニー・スタークは、ヒーローとしての先輩というだけではない。かつてピーターと同じく自分の得た強大な力を自分の良心だけで用いようとして、その後長きにわたる戦いを経て成長した性格的にも先輩キャラである。すっかりベテランとなって落ち着いているが、彼にとってピーターの存在は、過去の自分が通ってきた道を歩み始めた後輩ということになる。

 いわば、歴戦の勇者が振り返りたくも無い過去を突きつけられ、せめて自分が正しい成長を促してやろうという老婆心でつきあってるという感じになる。これはトニーだから出来る事で、例えばキャプテン・アメリカとかソーとか、他のアベンジャーズのキャラでは出来ない役回り。上手い人選と言える。しかも基本的に放置することによってスパイダーマンのサイドキック(サポート役の相棒)化も防いでいる。

 だから配役の絶妙さというのがまず本作の強みとして考えられるだろう。

 そして物語もそんな設定に合わせている。

 ヒーローものと考えると、ついつい大がかりで、地球侵略とか政治的なものを考えがちだが、今回登場するヴァルチャーは悪党としてのスケールがとても小さい。  中小企業の社長という設定の彼が考えているのは、家族に不足無く食べさせることであり、従業員に給料をやって養うというレベル。少々違法性があっても、そのためだけに働いている。

 スケールが大きければ良いというものでは無い。高校生のヒーローが守る適正レベルのヴィランはこれくらいがぴったりするし、この位だから、戦いも見応えがあるというものだ。単に敵がでかければ良いってもんじゃない。それにヴァルチャーの正体がばれた瞬間は、全然予測しておらず、これまでの伏線が一気に収束していく感じで、「見事」と言いたかった。

 高水準にまとめられ、しかも楽しい。このシリーズは期待できそうだ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)じゃくりーぬ ロープブレーク[*] deenity[*]

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