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[コメント] オープニング・ナイト(1978/米)

凄まじい作品ですが、カサヴェテスとローランズの夫婦の関係まで垣間見える気がします。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 役者として順調にキャリアを積んだカサヴェテスだが、監督としては決して恵まれてはいない。作る作品は評論家受けし、熱烈なファンがつくものの、実際は私財を投入し、出演者も無料出演(とは言え、彼らはカサヴェテス作品の大ファンでもあり、“カサヴェテス・ファミリー”とも言われた)という、かつかつの予算で映画制作が続けられていたそうだ。実際カサヴェテス自身も自分が映画に出演するのは次回作を作るためだと割り切っていた節があり。

 そんなギリギリの映画製作が続けられてきたが、その中でも極めつけが本作と言われる。

 これまでの作品も「難解極まる」と言われていたものだが、本作は特に内容の難解さや上映時間の長さなどが災いし、アメリカでは公開劇場が見つからず、カサヴェテス監督は莫大な借金を負ってしまったという。事実本作が公開出来たのはヨーロッパと日本くらいで、アメリカで上映されたのは実に10年後の1988年になって。実に不運な作品だった。

 しかし、今になって本作を観ると、難解とか何とかよりも、ローランズの圧倒的な存在感と、その不安さと言うのが見事に“今の物語”として体現されているかのように思える。オープニングカットなんか私の大好きな『オール・アバウト・マイ・マザー』(1998)を先取りしたかのようだったし、物語そのものも確かにアメリカよりも日本で受け入れられる要素充分と言った感じ。説明不足で途中のダレ場がちょっときついのがあったけど、大変好みの作品だ(後30分は落とせたぞ)。

 本作でのローランズの演技はもの凄いものがあり、気怠さと不安に苛まれるシーンなんかは圧倒的迫力。『グロリア』(1980)の時よりも迫力あったよ。そしてそれをサポートするカサヴェテス自身も良い。単なるぶっきらぼうなだけと思われていたが、最後の演技で実は最も彼女を案じていたのが彼自身だと言うことが分かる。

 ちなみに本作のため、巨額の借金を作ってしまったカサヴェテスは次回作として全く毛色の違う『グロリア』が作る事になるのだが、皮肉なことに、そちらの方が大ヒットを記録することになる。

(評価:★4)

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