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[コメント] ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016/米)

フォースの覚醒』で置き忘れた魂を取り戻した作品。ギャレスがここまでやってくれるとは。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 まさにここには確かな“想い”という奴が詰まってる。本当に「俺はスター・ウォーズが大好きなんだ!」という魂の叫びがダイレクトに伝わってくるし、EP4につなげる最も感動的な物語とは何かを考え抜いて作られている。

 そもそもEP4は絶望的な状況から始まった。既に帝国のデス・スターは完成目前。対抗する共和軍はリーダーがおらずに足並みが揃わず、精神的な中心となっていたレイア姫も帝国に捕らわれてしまった。最早帝国に蹂躙される以外の道はなかったかと思われた状況である。

 ただ、その中で唯一の希望があるとすれば、帝国が建造中のデス・スターには致命的な欠陥があるというだけ。

 その状況の中、その唯一の希望について描ききったのがこの作品となる。爆弾の一撃で破壊できると言う、デス・スターの隠された一箇所を探し当てることだけが本作の目的となる。

 ただそうは言っても、本作の前半は結構退屈。ありがちな物語を淡々とこなしていると言った雰囲気に過ぎない。せいぜい見所で言うならば、ドニー・イェン演じる坊さんチアルートの体術が見事なことくらい。そもそもテーマが決まってる以上、そこから大きく逸脱は出来ないし、どうせ収まるところに収まって終わりだろうとか思っていた。恥ずかしながら、完全に舐めきってた。

 その雰囲気が変わってきたのがジンが自分達をローグ・ワン(ならず者軍団)と称し、惑星スカリフへの特攻を決意した辺りから。それまで度々チアルートが語ってきた“フォース”の存在が、全員の希望へと変わり、そのために戦おうとしている。この時点でローグ・ワンの面々は生き残ろうとかそういうことを考えておらず、死に場所を求めるようなところがあるが、その辺の特攻シーンは、ヤマト世代にとってはたまらない心地よさとなる。

 ここでの台詞「May the FORCE be with us」の台詞はとにかく痺れる。ここはやっぱり日本語の「フォースと共にあらんことを」ではなく、原文で読みたいところだ。彼ら一般兵士にフォースはない。だが、フォースを希望として、全員で戦おうという決意が泣ける。

 以降それまでの演出のかったるさはどこいったやら。怒濤の展開が待つ。

 これは本当に凄い。何せ共和国側の誰も生きて帰ろうと思ってないわけだから、絶望的な状況の中、一角一角削られ、死んでいくシーンまでもが格好良く見えてしまう。ロボットのK-2SOが破壊される時まで本当に格好良く見える(と言うか一番泣けた)。

 最終的に誰一人生き残らなかったのは意外ではあるものの、これだけの犠牲を払ったからこそ、デス・スターの破壊は悲願であることが伝わってくる。お陰で後半は興奮しっぱなしである。こう言うのをこそ観たかった!と思わせてくれる、大変嬉しい作品だった。

 あと細かいところにも色々配慮がされている。本作はEP4の直前ということもあって、ストーム・トゥルーパーやダース・ベイダーのマスクはEP4になるだけ近づけようとしている。以降の作品で少しずつデザインが変化し、洗練されていったものだが、最も野暮なデザインそのものが出てくるので、逆にそれが新鮮に思える。一番はダース・ベイダーだろう。ここに出てくるダース・ベイダーは決して動きが良くない。老人のようなゆったりした動きなのだが、そんなベイダーの前に何者も立っていられないという極端な強さ。そうそう。これがダース・ベイダーの存在感だったんだよ。と再認識させられる。

 もう一つ。本作の素晴らしいところを挙げさせていただこう。

 それは、一作目である『スター・ウォーズ』(1977)には現在「新たなる希望」という副題が付いているのだが、直撃世代にとっては、それが余計な副題としか思えなかった。本音で「EP4は『スター・ウォーズ』一言で良いじゃん」とずっと思っていたのだが、このローグ・ワンの存在によって、やっとその「新たなる希望」という文字に意味を見いだしたと言う事。後付ではあるものの、その直前にフォースを希望としている人達のこれだけの犠牲があってこそ、「希望」という言葉を出すことが出来るのだから。

(評価:★5)

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