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[コメント] 娘・妻・母(1960/日)

現代で同じ設定で作ったらどれだけ物語がかけ離れるのか。ちょっと興味があります。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
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 ひたすら日本の家庭の中の女性を描き続けてきた成瀬監督の、一種純化された家族物語で、一種の成瀬イズムの集大成と言っても良い。性格の悪い人間に囲まれ、身の置き所のない女性が大金を手にしたときにどうなるのか。まずは設定ありで、そのワンアイディアを膨らませ、手慣れた物語に仕上げてくれた。

 ただ、ここに描かれるのは結局、姑や夫にいじめられて婚家から逃げてきた女性が、実家の中でも金の絡んだ人間関係に巻き込まれてしまう話で、こう言うときに身の置き所のない女性は、その金を使うしかない…本当に観ていていたたまれない気持ちにさせられてしまう。どうもやっぱり私には苦手な作品だなあ。

 大戦以前を経験している家庭と言うのはこう言うものなのかな。女性に自意識を持たせることは許されないことで、何があっても受け身でひたすら耐え続けねばならない。時としてそれは理不尽なものであり、しかも一度でもそれから逃げてしまうと、重ね重ね責められる…1960年という時代に作られたにしては、設定は古いが、まさにそれが“今”を示すものとして受け止められたのだろうか。

 もしこれが現代に作られたら、同じ設定で作られても全く異なる物語になってしまうのだろうね。多分とっくに一家離散状態となり、それぞれが好き放題に生きてる物語になるんじゃないかな。対比としてそういうものを観てみたい気もするね。

(評価:★3)

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