[コメント] ターミネーター:新起動/ジェニシス(2015/米)
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改めて、この作品ほど先の読めないシリーズはない。
キャメロン監督の大出世作第1作の『ターミネーター』(1984)は、B級の安っぽい作品だったから、矛盾の多いタイムトラベル作品でも受け入れられた。
元が設定上アラの多い作品だけに、続編は相当難しい。なんせ設定上の矛盾を含めようとすると、本編の物語の方が噴飯物になってしまうだろう。だから続編は失敗が約束されていたようなものなのだが、驚くべくことに、『ターミネーター2』(1991)は1作目を超える出来の良さで、SF映画史に残る名作となった、ほぼ奇跡のような作品に仕上がった。
だがここまで。以降、『ターミネーター3』、『ターミネーター4』(2009)は凡作に仕上がり、ほぼ失敗作の烙印を押されてしまう。
当時は『ターミネーター』と『ターミネーター2』の続編で、渾身の力が入った作品と言うことで、期待度が高く、それ故に失敗作の落胆も大きかったのだが、改めて考えると、『2』の奇跡的な出来に目を奪われてしまい、本来失敗の確率の方が遙かに高い作品であることを忘れていたのだ。最初から失敗するものと思っていた方が無難だったようだ。
それで消えるかと思われたのだが(『ターミネーター4』は3部作の予定だったが、興行の失敗により製作会社が倒産し、続編は立ち消え)、全く新しい観点から新作が作られることとなった。それが本作である。
その出来は如何?というより、期待すること自体を放棄した状態で観に行ったのが功を奏したようで、結構楽しく観ることは出来た。
物語の設定で言うなら、これは本来の『ターミネーター』を書き換える物語で、だから本来の物語と全く異なるサイドストーリーと割り切ったのが良かったんじゃないかな。オリジナルストーリーを下敷きに、やりたい放題やったものの、決して嫌味にはなってない。
それが可能だったのは、結局「誰も何も期待してない」という、かなり後ろ向きな理由から。前述の通り、少なくとも『4』のあたりでほとんどの人は、もうこれ以上このシリーズに期待するのを止めてしまった。その時流に乗れたからこそ、好き放題にやっても許される作品となったのだから。
だから、本作は全く新しい『ターミネーター』として観るのが正しいし、新しい『ターミネーター』の始まりの話であるとすれば良い。そこで踏み込んで、本作がターミネーター・サーガとか言い出したら悲しくなるから、そこに至らないように精神を保つ必要性がある。
それでもうずうずしてしまうため、一つだけ設定のアラを。
『ターミネーター』で使われたタイムマシンだが、これが仮に任意の時代に対象物を送る事が出来たとしたら、全ての設定が崩れ去ってしまうという事実がある。2029年からは1984年にしかタイムトンネルが開いてないという設定が必要なのだ。そうでなければ、ターミネーターをもっと前の時代に送って、例えば結婚する前のサラの母とかを殺していれば済む。時代も1960年代だったら、流石に対抗手段もなかろう。それにそうなると『ターミネーター2』も、何故この時代にT-1000を送らねばならなかったのか、という設定が崩れ、あの物語自体に意味が無くなる。ましてや1984年から好きな時代にタイムマシンで行けるとなると、最早物語そのものが破綻してしまうわけだが…
そのへんも、「これは『ターミネーター』のパラレルワールドの話である」と考えておくのが正しいのだろう。
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