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[コメント] 驟雨(1956/日)

成瀬監督お得意の男女のドロドロした関係が、本作に限ってはさらりと流されているので、好感度が高いです。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 岸田国士の戯曲「紙風船」「驟雨」「ぶらんこ」「屋上の庭園」「隣の花」「犬は鎖につなぐべからず」「かんしゃく玉」等から題材を取った成瀬監督後期の作品。確かに色々な短編から題材を取ったと言うことで、話にまとまりがなく、興行成績も振るわず、当時の批評家からも酷評を受けた作品らしいが、現代の目で観ると、ラストの展開に到るまでミニエピソードがうまくつながっている。

 実際、この作品はほとんど一軒の家から舞台が展開せず、会話だけで成り立っているのだが、その会話が軽快だし、原節子がいろんなタイプの女性…と言っても実際演じているのは一人だけなんだけど、相手によって結構色々な側面を見せてくれる。ただ耐えるだけでなく、色々な面を見せる姿は大変面白い。ラストの紙風船のシーンは、それまで色々あっても、やっぱり夫婦は続いていく事を感じさせられる小洒落たまとめ方も好感度高い。

 成瀬監督は職人監督と言われる。その理由はどんな予算でも、そしてどんな期間でも、会社から示された枠内できっちりと仕上げ、しかもそこそこのヒットを見込めるからだという。それを見事に体現したのが本作だと言えよう。

 こんなエピソードがある。

 『あすなろ物語』を撮影中の堀川弘道監督が、あまりの予算超過に東宝から「成瀬について勉強してこい」と言われて撮影スタッフとして参加。あまりの合理的なやり方に驚き、「まるで織物職人の筬(おさ)がかようようだ」と述懐していたとのこと。

(評価:★4)

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