コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ホビット 決戦のゆくえ(2014/米)

原作はもっとこども向きだったはずだが?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ホビット三部作の最終章。前作『竜に奪われた王国』は侵入者に怒ったスマウグが、その腹いせに町を焼き払うべく飛び立つところで終わったが、その直後からの話となる。  意外なことにスマウグはあっけなく殺されてしまったため、気が付くと城の奪還が出来てしまっていたという状態から話が始まるのだが、これまでの旅の目的は全てこの時点で果たされてしまう。これで「めでたしめでたし」であれば、開始後20分で作品は終わってしまうのだが、本作の主題はここから始まる。

 首尾よく城を奪還し、先祖の莫大な財宝を手にしたトーリンがどう変わっていくのか。本作では“祖父の呪い”と言われているが、王の証であるアーケン石を手に入れ、すべての財宝を自分のものにしようと考えてしまう。本作はその呪いからトーリンが脱しての総力戦の描写が本作の全て。

 映画としてこの物語展開に納得はいく。1作目から度々登場したオークやエルフ達が過去にどのような因縁を持っていたのかを丁寧に描き、最後の決戦でその伏線を活かしているし、実質的にその後日譚となる『ロード・オブ・ザ・リング』へのつなげ方もしっかりしている。3部作の長丁場をきっちり使って丁寧な作り方をしてるとは思う。三本の映画を通して一本の物語を作ったという意味では成功したとも言える。

 …とは、思う。の、だが、こういう「ホビットの冒険」をこう作る?という疑問は拭われないまま残った。

 原作においては「指輪物語」の前史という位置づけの「ホビットの冒険」は、日本では岩波ジュニア文庫から刊行されている。それはつまり、「指輪物語」よりもぐっと低年齢層を対象とした、ちょっと長めの童話だった。それで物語もちょっとハードながら童話の中に収まっているけど、映画版はそこから踏み出してしまったか?というところが引っかかってしまう。本来の童話としての話を作って欲しかったという気持ちもあり。

 それに三部作の最終章となるこの話では本来の主人公であるビルボの見どころが少なすぎるのもちょっと気になる。基本ホビットはアクションをしないキャラ付けなので、戦いは他のキャラに任せ、ビルボ本人はもっと精神的な部分で他のキャラに関わることになるんだろうが、それが少々希薄。ビルボに魅力が薄いので、他のキャラを目立たせて群像劇にしようとしたのだろうが、これこそが本作の弱味になってる。たとえばこれが『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』であれば、紆余曲折あっても最後はきっちりフロドに話を持っていったのだが、この作品の場合、最後まで戦ったのはトーリンであり、レゴラスであり、ビルボはただそれを見てるだけ。その辺の脚本をしっかりさせる必要があったのでは?

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。