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[コメント] 渇き。(2014/日)

日本に園子温は二人もいらん。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 映画に向かない物語ってのは確かにある。それを敢えて映像化する場合、監督がそこに独自解釈を加える必要があるし、それを視聴者がちゃんと受け取れるように工夫する必要もある。中島監督はそれが出来る監督であり、これまで何作も、そんな映像化に向かない作品をきっちりと作り込んできていた。

 ところが、本作においては、全くそれが出来てない。いやむしろそれをないがしろにしてるように見える。物語の持つ残酷性ばかりをクローズアップして、それに対するフォローを敢えて入れてない。全く救いがない物語で終わらせてしまった。

 物語の酷さは脇に置いたとして、この作品の大きな問題点は、「不親切さ」に尽きるだろう。

 話が切れ切れでわかりにくいとか、シームレスに3年前と現在を行き来するとか、やたら人が出てくるくせに、その相関関係が分からないとか、それこそ色々あるけど、何より、わざとそれをやってると言うのが問題。下手くそな監督で、実力不足が説明不足につながったのならともかく、監督の場合は、それを意識的にやってる。

 中島監督作品の一つの特徴として、くどいほどに登場人物の口を通して、しっかりと説明してくれるって点がある。ことが売りなんだから。その部分をわざわざ今回は使わず、視聴者に委ねたのは間違い。

 結果として、本作は瞬間瞬間の映像を受け取るだけの作品に成り下がった。

 あと、主人公を役所広司にしたのもあんまり良くなかった。この人、ダメ男を演じることが大好きのようで、いろんなタイプのダメ男を演ってるが、本質的に、顔が良いから根本的なところでダメ男に見えない。むしろ頑張ってやってるのが痛々しささえ感じられてしまう。

 これだけの実力を持った監督が、わざわざこんなのを作ったと言うのが悲しいところだ。挑戦作と言えば聞こえは良いけど、この作品では挑戦は敗北に終わったようだ。

 ちなみに、本作では結構珍しい経験をさせていただいた。

 映画も後半になり、藤島が電話で殺人鬼と会話するシーンがあるのだが、そこに至った途端、映画館の画面が真っ黒になり、会話もなくなった。

 えらく斬新な演出だな。と最初は思ってたが、体感時間にして一分ほども経ち、これはトラブルでは?と思い始めたところ、劇場スタッフがやってきて、「落雷のため電源が落ちました」という説明が入った。映画観てて停電って、初めての経験だった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぱーこ[*]

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