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[コメント] それでも夜は明ける(2013/米)

たいして面白く感じないのは、私自身の問題。なのか?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 重い作品だが、文芸映画としていかにもアカデミー好みって感じ。何よりストレートにアメリカの奴隷像を描いている点が評価されたのではないかと思われる。

 奴隷制はアメリカにおける恥ずべき歴史とされているが、これをストレートに描くのは大変難しい。評受けはするものの、あまり正面から描くと、売り上げが伸びない事がほとんどなので、スポンサーが付きにくいのが最大の理由だろう。これまで作られたものもそう多くない。同じく実話を元にした『グローリー』(1989)なんかの場合は戦争という付加価値をつけていたし、昨年公開されたタランティーノの『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)の場合は完全娯楽。長年アフリカ系アメリカ人の姿を描き続けているスパイク・リー監督でも、ストレートな奴隷制を描くことがなかなか出来ないでいるという折、こんな作品が出てきたことは嬉しいことだ。

 実際、丁寧に描かれた奴隷制の描写は、殊更残虐性を増すこともなく、非常に淡々と、それでも確かにあった差別をきちんと描いている感じで、物語の室はかなり高いと思う。

 有名俳優が次々に登場する割に扱いがあんまり良くないってのもポイントかもしれん(ブラピは別だが。なんせ製作者)。

 ただ、それを自分自身が観たらどうか?と言われると、「こんなもんか」というのが正直な感想。

 多分それは、この過去を振り返る姿勢が昔の邦画の変な記憶を呼び覚ますからだろうと思う。

 80年代から90年代に邦画に起こった一種のブームがあった。それは第二次世界大戦の総括とも言える作品が量産されたのだが、それは自虐史観に満ちたものであり、作品としてとにかく鬱陶しいものばかりを見せられる羽目に陥った。戦争が悪いなんて自明の事を、「過去の日本人はこんなに悪い事をやったんだよ。でももうそんな事はしないよね?」と言った感じで仕上げてしまい、洗脳かと見まごうような作品が量産される結果となった。

 私自身の政治姿勢は確かに戦争反対の立場に立つけど、その私にとっても、これほど鬱陶しい作品を見せられるのは拷問に近かった。

 お陰で過去を振り返って、「ほら、あなたの先祖はこんな事をしたんだよ」を描くのには嫌悪感を抱くようになったのだが、まさに本作にはその臭いがしてくる。そのため、どうしてもはまり込めないようになってしまった。

 作品自体の出来如何ではなく、私自身が嫌いなやり方を取っていることで本作を普通に観られなくなってしまった訳だ。

(評価:★3)

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