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[コメント] 映画女優(1987/日)

脚本新藤兼人?ああ、なるほどね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 日本の誇るトップスターの一人で、映画以外でも恋多き女性として知られる田中絹代というスターの半生を描いた作品で、一人の女性を描くことで日本映画史を作り上げた、市川監督の意欲作。興行的には芳しくなかったが、批評家受けは良かった作品でもある。

 本作に歴史的な意味合いがあることは認めるし、勉強にもなる作品でもある。映画、殊に邦画を語るならば、是非観ていてほしい作品ではある。

 ただ、その前提に立ったとしても、観るには結構きつい作品。

 まず、物語がどうにもすっきりしないのが一つの問題。できるだけ一人の人間を客観的に観ようとしているのは分かるものの、客観的に見えないのは致命的。脚本書いたのは新藤兼人だそうだが、この人はとにかく人の描き方が極端で戯画化されたものばかり。それを実在の人物に当てはめるもんだから、田中絹代が観た目通りの(?)エキセントリックな人間としか描かれてなかった。温かい心情を排することによって、一側面だけがクローズアップされ、観ていていたたまれず。それにあのラストはなんだ?唖然としたよ。

 それと、やっぱりキャストがなあ。同じく大女優として吉永小百合を持ってきたのだろうが、そもそもこの二人は全く演技の質が違う。情熱的直情的な田中絹代を、清楚さを求められる吉永小百合に演らせるのには無理があった。そもそも中心がおかしいのだから、彼女を取り巻く男優陣も浮いてしまった。

 野心的な作品であることは認めるが、いかんせんいろいろなところで駄目。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ペペロンチーノ[*]

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