コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] スノーホワイト(2012/米)

白雪姫って、純粋な少女を描く物語と思っていた。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 かつて「不思議の国のアリス」をアクション作品にしたバートン監督の『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)のスタッフが再結集して作り上げた「白雪姫」を下敷きにしたアクション作品。

 今更ながら言えば、『アリス・イン・ワンダーランド』もバートンが作ったからこそなんとか観られるレベルだった訳で、物語としてはどうしようもないレベルの作品だった。そのスタッフが結集したといった時点で気づいているべきだったんだろう。

 まずキャラ。“雪よりも白く美しい”白雪姫。まあ美しさについては一応良い。だけどどこが“純粋”なんだ?この描写の仕方だったら、人間非人間関わらず男達を手玉に取る悪女にしか見えない。自分の意地のため数多くの人間達を死地に向かわせ、時にそれは自分の体を報酬に駆け引きしてみたり、男に唇をせがんでみたり、挙げ句の果てに二股かけて本命とリザーブの男を近くに侍らせるような女を“純粋”と称するのは無理がある。

 そもそもいくら『トワイライト〜初恋〜』(2008)でブレイクしたとは言え、この程度の新人がシャーリーズ・セロンに敵うわけがなかろうが。脇役を含めて主人公側に魅力が無いので、引き込まれるところがない。まあこの作品を魔女の方を主人公と観るなら納得はいくんだけど。

 次にストーリー。前置きを最小限にして魔女に対するスノーホワイトの復讐譚にしたため、ものすごく見所が少なくなった。物語の大半は追っ手から逃げるだけで、最後に復讐劇がちょっとあるだけ。これで物語に起伏をつければいいのに、延々と逃げるだけ、そして最後にアマゾネスみたいな女になって雄叫びを上げながら魔女を殺す。単なる殺伐とした物語だけである。

 しかもその過程にあって主人公の心の成長はなく、最初から計算づくでやってる毒婦のような性格が変わってない。そもそも10年以上も牢に閉じこめられているのに、筋肉とかぜんぜん衰えてないで飛んだりはねたりしてる時点でおかしい…セガールか?その辺に説得力を持たせられず。更にほとんど人と接触してないのに交渉術とかこなれすぎ。こいつは天性?いずれにせよ、自分の保身のために交渉したり半ば脅迫してる時点で純粋な人間には見えないのが致命的。  ただ物語を流しただけなので、全部一本調子で意外性もなく、物語的な快感に欠ける。  最後に鏡を前にしたスノーホワイトの行動がなにも描いてないのが問題。この終わり方では、“前の魔女が死んだので新しい魔女が誕生した”だけにしか見えない。これだけ魅力に欠ける物語を作られるだけで凄いと思う。

 いくつもの伏線のようなものも張られているものの、それらの回収もなおざりにされてるのも気になる。例えば魔女は心臓を食べることによって若さを保っていると最初に言っていたようなのだが、雀の心臓食べてる以外では描写が無く、若さを得るために直接人の精気を吸い取ってるし、精気吸い取られた人間が最後にちゃんと元の姿になって復活しているのに説明がない。魔女の弟の存在の意味合いとか、スノーホワイトを襲うのをやめたトロルは何のために出てきたのか、まるでシシ神のような殺され方をした聖なる鹿はなんの役に立ってるのか、わざわざ出てきた割にはあんまり出てきた意味のないドワーフとか、それらを話を深める方向に全く使えてない。

 結果としていうなら、セロンの体当たり演技以外で本作を評価する気になれないし、それ以前の問題としか思えない。セロンいなかったら躊躇せずに最低点付けてたところだ。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)セント[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。