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[コメント] カイジ2 人生奪回ゲーム(2011/日)

原作者が脚本に入ったことを売りにしてたけど、それって、これっぽっちも売りにならないから。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 原作漫画も大好評の福本伸行原作「カイジ」の2回目の映画化作。

 一作目の『カイジ 人生逆転ゲーム』は映画的にはかなりこなれた作品だったが、その理由は漫画から映像への転換が上手く出来ていたことにあった。福本漫画は全般的に展開が遅いのが特徴で、その間に心理戦やら“ぐにゃ〜”やら“ざわざわ”だとか、擬音と狂ったパースで読者をじりじりさせてくれる。これは漫画としては実に優れた手法だが、これをそのまま時間の限られた映画にするわけにはいかない。

 一作目の脚本大森美香は、これをとにかくスピードで乗り切った。2時間の映画の中に三つのゲームを盛り込み、それをテンポ良く展開させ、見事な転換を見せてくれたものだ。

 そして2作目。この作品は脚本に原作者の福本伸行が参加しているとの事前情報が…

 これが何を意味するか。もう明らかだろう。

 この人が関わると、絶対話が間延びする。漫画の文脈と映画の文脈の違いをきちんと理解してる人が関わっても、原作者が関わると言うことは、それほど強いのだ。

 で、実際思ったとおり。今回もゲームは三つ出てくるが、原作にもあった“チンチロ編”は冒頭5分で終わり、映画オリジナルの“姫と奴隷編”も単なる通過点。結局物語のほとんどは“沼編”だけに費やされることになった。

 で、問題としてこの“沼編”はオチが分かっていると、ほんとに面白くないのだ。  少なくとも一作目には原作にはない意外さがちゃんと用意されていた。それは「こんなスピーディで良いのか?」というものだったり、「何でこんな爽やか青春物語にするんだ?」と言ったものだったが、原作既読でも充分に楽しめるように作られていたのだ。

 ところが本作の場合単に原作をなぞるだけで終わってしまう。そもそも主人公がやってることがパチンコ打ってるだけなので、動きもない。原作未読者には通じるのかも知れないけど、知ってる人間としてはねえ。

 結局本作は役者の演技で観るしかない作品になってしまった。

 藤原竜也は相変わらず上手いんだか下手なんだかよく分からない人だが、何事にもテンションマックスなので、本作には丁度良かったのかな?パチンコ打ってるだけの中で、表情とかオーバーアクションとかで出来るだけ動き出そうとしていたし。

 意外な登場をした利根川役の香川照之も良い感じ。昔からこの人出てる作品は観てきたけど、最近とみに演技の幅が広がった気がする。この人を復活させたのは大正解。

 問題はヒロイン役の吉高由里子。この人の存在で全部ぶちこわし。たいした役でもないのに最重要の位置を与えられ、しかもやってることが丸わかりのくせにもったいぶった演出するもんだから、興が削がれることおびただしい。こいつに時間使ったこと自体が間違いだ。一作目の天海祐希がなんだかんだ言って上手かった分、その底の浅さが余計目立ってしまう。

 …とは言え、点数を低くするほどの悪さでもないからなあ。とりあえずこの点くらいにしておくか。

(評価:★3)

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