[コメント] ヒーローショー(2010/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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私が本作を観るに至った理由は、監督が井筒和幸だった。と言う事実と、予告編のみ。つまり具体的に内容を全く把握せずに観に行ったと言うことである。そんな状態で私が本作に期待していたのは、「痛々しい青春賛歌」であった。たぶん本作はバイトで嫌々ヒーローショーに参加させられた主人公がいろんな人にもまれ、様々な経験をしていく。そんな『パッチギ!』に似た物語展開になるだろうと予測していたのだ。
だが実際に観た本作は二重の意味で驚かされることになった。
最初の驚きは、本作は決して青春賛歌などではなかったと言う事実。ヒーローショーが出てくるのは冒頭のほんのわずかな時間だけ。その後突然暴力と、その報復の更なる暴力。エスカレートする拳と金属のぶつかり合い、そして殺人および死体遺棄という予想を超えて深刻な展開になっていた。ちょっと頭がついていけなくなりつつあったが、その中でも「これは人殺しと言うことがどれだけシャレにならないものなのか」について描こうとしているものなんだ。と自分なりには納得。
だが次の展開に又しても驚かされた。ゆるゆるのロードムービーと言うか、男二人の即席の友情話…
なんでこうなる?これって変則的ではあるが、『青春の殺人者』か?いや、それ以前にこの作り方って、そのまんま…
そう。これはまさしく現代に甦るATG!
懐かしいと言えば懐かしいが、今の時代にATG調って、普通受けるとは考えないし、敢えて今作る理由は?
いや、井筒監督が作りたいように作ったらATG調になってしまった。と言う以外の理由なんてそもそも無かったのかも。
結局本作が終わる頃になって思えたのは、「やっぱり井筒監督は半端じゃない」と言うことだけ。半端じゃなく、こいつは古い。頭の中が40年前で止まってる。だけど、こんな作品作ってくれる人がいるってだけで何か嬉しくもなるぞ。
しかし改めて考えると、この作品観た人の反応ってまっぷたつに分かれるんじゃないだろうか?
それこそATG盛んな頃に映画観てた人にとっては、本作は懐かしく「今もこんなのが作る人がいるんだ」と言う安心感に拍手を送りたくなるだろう。しかしATGとはそもそも何ぞや?と言う人には、単に破綻して訳が分からない物語にしか思えないのではなかろうか?賞賛する人とけなす人、見事に分かれそうな作品ではある。
ちなみに私はATG結構好きなんだけど、リアルタイムじゃなく、ビデオでしか観たことがないので、そのどっちの気持ちも持ってる。だからこの作品の評価は極端と極端で平均して中間。と言ったところ。
若い世代の人たちがこれを観て、少しでも何かを感じてもらえればそれでいいんじゃないかな?そういう立ち位置の作品だ。いずれにせよこんなのが作れる監督はとても貴重なので、井筒監督にはまだまだがんばってほしいものである。
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