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[コメント] ファニー・ガール(1968/米)

ストライサンドはデビュー時からこんなふてぶてしかったと言うことがよく分かります。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ファニー=ブライスの生涯を描いた作品で、バーブラ=ストライサンドデビュー作。1968年度授賞式でストライサンドは『冬のライオン』のヘップバーンと主演女優賞をダブル受賞となり、1969年全米興行成績2位。

 アメリカ映画史において1968年というのは特別な年になる。前年『俺たちに明日はない』(1967)によって始まったアメリカン・ニューシネマのブームが始まっていたが、同時にこの年は時ならぬミュージカルブームでもあった。オスカーを得た『オリバー!』を初めとして、アンドリュース主演の『スター!』、ヴァン・ダイクの『チキ・チキ・バン・バン』、アステアの『フィニアンの虹』、ブルックス監督デビュー作の『プロデューサーズ』などなど。おそらくこれは映画の流れが変わりつつあることを恐れた製作側が敢えて昔ながらの手法を取り入れた結果だと思われるが、お陰で保守的な作品と革新的な作品とが混在することになった。大変な混乱ぶりだが、だからこそ非常に興味深い年でもある。

 アカデミーの結果を見れば分かるとおり、この年では保守的な作りに軍配が上がったが、同時にその下で脈々と新しい作品が息づいていた。この混乱ぶりが楽しめる。  本作はそう言う意味ではかなり保守的な作りの作品で、一応実在の人物を元にしているが、ストーリーそのものはほとんど『スタア誕生』(1954)そのまんま(後年ストライサンドが『スター誕生』(1976)で主演してるのも皮肉っぽい)。派手で目を惹くものではあっても、演出は結構古くさいもの。私はこの手の物語が一番苦手なので、どうしても感情移入は出来ず(ワイラーの演出もあんまり好きじゃないし)。

 ただ、本作の最大の功績はバーブラ=ストライサンドという女優を生み出したという点にこそあっただろう。ふてぶてしさと、突出した歌唱力のお陰で、他のキャラ全てを喰ってしまってる。本来強烈な個性を持つはずのオマー=シャリフさえも輝きを失って見えるほど(シャリフはストライサンドからスケジュールを変更してまで指名されて出演)。どう見たって、到底本作がデビューとは思えないほどの堂々たる主役ぶりだ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)りかちゅ[*] shiono

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