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[コメント] インスタント沼(2009/日)

こんなもんばっかり作ってたら、三木監督がジャンル監督に規定されてしまいそう…まあ、それが好きな奴だっているんだけどね。例えばここに。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







三木聡監督最新作。三木監督作品は映画であれテレビドラマであれ、新世紀になり突如人気を博することになったのだが、その魅力を語るのはちょっと難しい。強いて言えば、三木監督作品の面白さは強烈な日常描写にある。何気ない日常の中に強烈な違和感を持った人物やアイテムあるいは言動が登場するのだが、それをさらっと流してしまう。それら違和感の登場するタイミングが見事で、思わず噴き出してしまうことになる。“空気”の読み方が絶妙だと言うことになろうか。

 だから日常描写がとにかく見事。数分の時間の中で笑いのツボにはまる描写がつるべうちに出てくるため、次々に笑いが引き出されていく。特に本作はそれが顕著で、オープニングからの約30分間はとにかく笑いっぱなしだった。ここだけ観るなら本作は最高だと思える。

 しかし一方、この描写のうまさは諸刃の剣でもある。瞬間的な描写が冴えれば冴えるほど、肝心な物語性がどんどん後退していく。ありていに言ってしまえば、映画としての物語が全然面白くなくなってしまうのだ。『亀は意外に速く泳ぐ』のあたりから感じており、『図鑑に載ってない虫』で顕著になったのが物語性の低さだったが、本作ではそれが特に顕著に現れており、開始後30分をすぎて物語に話がシフトした辺りから急に退屈に襲われる。多少なり真面目な話にさしかかると、これまであんなに笑えていたのが、全然笑えなくなるし、かと言って物語が良い話と言った感じでもない。タイトルにもなってるインスタント沼の下りは実はかなり退屈なもの。物語の方は結構滑ってたよな。

 三木監督の前作『転々』は、その辺の反省からか、物語性とギャグの兼ねあいがうまくできていたので、それが出来ないはずじゃないんだが、敢えて物語性を低くしたのは何の狙いがあったのだろう?ずいぶんバランスの悪いものを作ったもんだな。

 キャラは結構うまくはまってた感じはあり。長く三木作品に出てるだけあって麻生久美子のナチュラルなボケツッコミ体質はここでもはまってたし、妙に常識的なパンカー(ヘアスタイルはモヒカンの癖に髪の毛が全部そろってる中途半端ぶりも良い)ガス役の加瀬亮もツッコミ役としては充分か。風間杜夫は…竹中直人こそはまり役っぽかったかな?でも悪くはなし。

 そう言えば、この作品を紹介する際三木監督は、「今までとは大きく違った作品です」と言っていた気がするのだが、出来たものを観る限り、本作こそ“まさにこれこそ三木監督作品!”って感じだと思うんだけどね。監督流のジョークだったんだろうか?

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ロープブレーク[*]

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