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[コメント] 母べえ(2007/日)

あるいは、TVで作られる以外では、このタイプの作品はこれが最後の大作になるのかも知れませんね。それも映画の時代の流れかな?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 原作は未読だが、子供の頃の記憶をさほど粉飾することなく、淡々と描いているのだろう。と言う思いにさせられる。本作には極端にドラマチックな物語が描かれている訳ではないし、戦時下における庶民の生活が淡々と描かれていると言った感じ。それこそこの手の作品は邦画の得意とする分野だったはずなのだが、特に近年になって本当に観られなくなってしまったので、こう言うのを時にスクリーンで観るのはとてもほっとした気分にさせられるものだ。やや賞に対する色気が垣間見えなくもないが、ユーモアも含め、山田監督の思い入れが感じられる作品に仕上がっている。

 陰日向に家族のために働く彼女の姿は、一見家族への犠牲行為に見えてしまうのだが、しかし実際はこれこそが彼女の喜びだったんだろうね。久々にそういう物語が観られたことには満足。

 ただ、最近この手の作品が作られていないというのはこういう事か。という一抹の寂しさをも感じさせられる作品でもあった。

 おそらくは映画としてこういう母の役を演じられる人、少なくとも山田監督クラスの目で見て、それに見合うだけの女優がいなくなってしまったのでは無かろうか?  確かに吉永小百合は落ち着いた演技でしっかり役をこなしていたし、満足いくだけの存在感を示してはいたものの、流石に年齢的に無理があるだろう。それでも吉永小百合でなければ本作は成立しなかったと言うところで、こういう役所が出来る女優がいなくなってしまった事を如実に感じさせられる。

 これからは映画でも「ALWAYS 三丁目の夕日」に示されるように古くても昭和30年代。もう少し行けば古い庶民の作品を作っても、40年代、50年代と時代が下っていくことになるんだろう。

(評価:★3)

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