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[コメント] M:i:III(2006/米)

てっきりスパイというのは「死して屍拾うもの無し」の精神だと思ってました。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 パラマウント入魂のビッグ・バジェット・プロジェクトだが、先行するインタビューなどで、嫌と言うほど家族のあり方や、家族愛について語られていた。これを単純なアクション作品と見てもらっては困る。と言う感じだったが、これは単に製作に関わったクルーズが熱愛の末とうとう家族が出来た事を強調するためだったらしい。だってあれだけ「普通のアクション作品とは違う」と言っていたのに、実際は本当に「ごくごく普通のアクション作品」にしかなってなかったから。特に近年アクション作品にそう言う人間関係の深みを与えようとする試みは多いのだが(具体的には『スパイダーマン』(2002)が良い例だけど、人間の心の内面にまで踏み込んだ『バットマン・ビギンズ』(2005)も良い出来だった)、どこかにそう言う所出してくれることを期待していただけに、それが全く描かれてなかった…というか、古い描かれ方しかされてなかったのが残念。

 確かに様々な要素を取り込んで、アクション作品としては一級品であることは認めるし、迫力は他の追従を許さない。その点について悪口を言うつもりは全くない。特に後半走りまくるクルーズの緊張感は凄いし、40歳を超え、ますますアクションに磨きがかかるとは凄い。この人はこれからも第一線で活躍し続けそうだ。

 だが、そのアクションを離れて、一個の作品として観たらどうか?と言うのとは別の話である。  先ず、本作は『スパイ大作戦』とは完全に別物である。そもそも『スパイ大作戦』は個々のチームが上から与えられた任務をプロ意識で淡々とこなすところが面白い作品だった。組織ぐるみでバックアップするとか、はたまた個人的な思いを組織に優先させるなど、あってはいけないはず。何より、プロなのだから「死して屍拾うもの無し」が信条じゃないんだろうか?任務に失敗した人間をわざわざ助けるためにチームを送り込むなんて、まるでアメリカ軍そのものじゃないのか?(悪い意味で)最早これは諜報組織ではない。MIFってのは実は軍隊なの?しかも秘密の組織のはずなのに、大きなビルに堂々と居を構えてるし、こそこそした所がなく、明るい部屋で堂々とミッションが語られてる。部長クラスの権限でアメリカ国内にヘリや攻撃機まで派遣できる。テロを防ぐ組織がテロ起こしてどうするんだろう?大体スパイの話なのに、公然と派手な作戦行動取ってること自体で話が成り立たないだろ。設定で言ったらボロボロどころか笑止千万。

 それと、これだけ実力派俳優を多く配していて、全部が全部クルーズを格好良く見せるためだけに行動してるのもなんだなあ。クルーズってそう言うのを嫌っていたと思ってたんだけど、自分の製作でこんなもん作ってくれてはなあ。お陰で少々評価は落ちた。それでも『カポーティ』で昨年の男優賞オスカー俳優ホフマンは見事な演技。10年前のクリストファー=ウォーケンを思い出させるけど、まさかウォーケンの代わりになる人がいるとは驚き。『25時』(2002)の気弱な演技も上手いと思ったけど、この人の本領はむしろ悪役にあるみたいだ。

 物語的には、ラビットフッドを奪うシーンが割愛されたのも勿体ないかな?入って出てくるだけだったからねえ。

(評価:★3)

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