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[コメント] 交渉人 真下正義(2005/日)

押井マニアの私が言うのも何ですが、本作を楽しいと思われた方は、是非『機動警察パトレイバー2』をご覧になってください。きっと「ああ、これか!」と思えるはずですから。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 新世紀に入って邦画も随分質が上がった。これは皮肉ではなく、事実、演出面においてCGの使い方が格段に良くなったこともあり、予算の枠内でしっかりエンターテイメントが演出できている。特に本作の本広克行監督は前作『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボー・ブリッジを封鎖せよ!』(2003)で実写の邦画興行成績歴代トップになった実力は伊達ではなく、本作でもそれは遺憾なく発揮されている。本作は最初から最後まで、笑わせる部分と緊張させる部分、盛り上げる部分をきちんとコントロールし、全編飽きさせない作品を作り上げてくれた。実際演出面だけに限って言うならば、ハリウッドの大作映画にも全く引けを取ってない。無茶苦茶な設定部分も、リアリティを排することによってスピード感を損なわないためだろう(これを端的に言えば、劇中何度も「クリスマスで都内は混んでる」と繰り返し語られたのに、木島刑事やSATは全く渋滞にぶつからず、真下も全く遅滞なくコンサート会場に行ったり、そこで犯人と遭遇したり)。これは監督の天性の感覚もあろうが、様々な映画を研究し尽くした結果だろう。実によく勉強してる。

 ちなみに私がこの映画を劇場で観る気になったのは、予告を観た時、「きっとやってくれる!」と思えたから。監督はかつて「湾岸署は特車二課です」と言った事があったし、予告編で地下鉄の枝線の事を言ってた時に、これはきっと『機動警察パトレイバー2 THE MOVIE』(1993)の実写版をやってくれるはず。と言う確信があった。

 それで本編を通して、そこらかしこに『機動警察パトレイバー2』の演出が詰め込まれているのを見られて、大満足。(他にもラストにボレロが用いられるのも某アニメで既に使われている)。

 そう言うことで、演出面に関しては本作は見事とも言える作品に仕上がってる。

 …が、しかし、本作には致命的な面がある。『踊る大捜査線 THE MOVIE2』でもそうだったが、設定面の無茶苦茶さはともかく、ストーリーが貧弱すぎる。演出に呑まれてしまうとあんまり感じないもんだが、ちょっと引いて見ると、あまりの物語のお粗末さに苦笑してしまうほど。あれだけ引っ張っておいて、犯人が最後まで生の声を出すことなく、単なる「オタク」というキー・ワードだけで実像が無いまま終わってしまうとは、ふざけが過ぎるんじゃないか?実像あってこその犯人でなければならないんだよ。

 それにあの終わり方を見た時、『フォーン・ブース』(2002)やるんじゃないかと思ったけどねえ…次の作品でその実像が明らかになるのかも知れないから、そちらに期待しようか。

(評価:★3)

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