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[コメント] フォレスト・ガンプ 一期一会(1994/米)

全く新しい監督の狙い、SFXの完成度、キャラクターの素晴らしさ。これだけ揃っていればアカデミー総ナメも当然のように思えてしまうけど、それに何より、アカデミーはアメリカ映画のためにある事をこれほど端的に示した映画もないでしょう。
甘崎庵

 原作を先に読み、その後映画の方を観たわけだが、これは断言できる。原作を超えた映画だ。

 この映画の上手いところは、これを「映像」としたこと。映画だから当たり前、とは言わないで欲しい。アメリカという国が味わった様々な事件。つまりフォレスト・ガンプが生きた時代はまさしくテレビ世代に他ならない。人はヴェトナム戦争、それに反発して起こったヒッピー時代、ニクソン・ショックなどを、全てテレビ(映像)を通して観てきた。アメリカ人にとってこれらは雰囲気こそ自分達で味わったとは言っても、実際の事件は全てブラウン管の中に封じ込めて、テレビという素材を通して観てきたわけだ(「見た」ではない「観た」のだ)。

 そう言う意味でフォレスト・ガンプの行動を、全てテレビを通して観ていると言う感覚は、その時代を知っている人間にとってはまさしくリアルタイムの疑似体験が得られる訳である。それを時代時代のヒットナンバーで綴る。アメリカ人にとってこれほどノスタルジーに浸れるものも無かろう。見事にテレビと言う素材を用いて映画を作り上げたゼメキス監督の巧さに驚かされる。

 それだけの映像を可能とするSFXの使い方も上手い。SFXというと、それまでは映像そのものをこれでもか!と言う具合に見せつけるものだったのだが、この作品を境として、むしろいかにして自然の風景にSFXをとけ込ませるか、と言う風に変わってきたように思える。オープニング及びエンディングで現れる羽毛を見ていただけで驚かされたものだ。今ではコマーシャルなどですっかり当たり前となっているが、かつてのTV映像にキャラクターを刷り込ませる技法もここで完成された風。

 トム・ハンクスの演技は『フィラデルフィア』で折り紙付きとは言え、それでもこれはまさにはまり役。本当にフォレスト・ガンプになりきっているかのようにさえ見える。ハンクスと組むと輝きを増すゲイリー・シニーズの存在も良いし、フォレストJrを演じるのが後に『シックス・センス』『A.I.』で大ブレイクするハーレイ・ジョエル・オスメントであることもチェックされたし。

(評価:★4)

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