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[コメント] 子連れ狼 冥府魔道(1973/日)

これでは大五郎があまりに可哀想だ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 三隅研次という監督は、当時の職業監督の中にあってかなり異彩を放つ監督だと思っている。

 本来職業監督というのは、淡々と脚本に従った物語を作りつつ、いかにその中でメリハリを付けるかというのを考える。だからシリーズが進むに従って演出が練れてくるのが普通。具体的にはシリーズの演出の方向性が定まると、その演出を中心に持って行くように他のパートがあるようになっていく訳だ。しかし三隅監督はそれだけでは気が済まないらしく、シリーズが進んでも何かしら新しい要素を付け加えようとする傾向がある。

 それが上手くいくと、新しい方向性を作り上げることが出来るが、それが上手くいかないと、本当の駄作になってしまう。特にこのシリーズにおいて、1〜3作の次々に出てくる新機軸は呆れるほど面白く、このシリーズが邦画でもかなり特異な位置を保つようになった理由。少なくともこの三作に関しては三隅監督に全部任せたのは大正解だった。

 ただ、それが上手くいかなかったら…というのが本作となってしまうのだろう。ちょっと演出的に外れのような感じである。

 本作で導入した新機軸は、これまで保護の対象でしか無かった大五郎を一人の男として描こうとしたことになるのだろう。しかし幼児にドラマを強いるのは無茶で、結果としてやってることは幼児虐待以外の何物でも無くなってしまった。特にポリティカル・コレクトネスが進んだ現代ではこれは抹殺対象になりかねない描写で、ヤバイ一歩に踏み込んでしまったのでは?と思わせてしまう。

 更に物語がちょっと無理ある。元々が荒唐無稽と言われればそれまでだが、刺客一人一人がメッセージ抱えて自爆してくるって、一体命をどう考えてるんだ?他に命の捨てようもあるだろうに、なんでむざむざ返り討ちに遭うこと前提で特攻する必要はまったくない…多分これ原作が漫画だからというのが理由だろう。刺客一人分で一話使えるから、話を延ばすには丁度良いからという単純な理由だと見える。

 演出は相変わらずキレが良い為にそれなりに観る事が出来るのだが、いろんなところで問題がある作品だから、差し引き0と言ったところだろうか?

(評価:★3)

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