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[コメント] 植村直己物語(1986/日)

遠くにいればいるほど近くになり、近くにいればいるほど遠くなる。男がロマンを持つとこうなってしまうのでしょうね。でも、羨ましいところも多々。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
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 1984年にマッキンリー登山中行方不明となった冒険者植村直己の半生を描いた作品で1986年邦画興行成績3位。

 植村直己は私自身に知己はないものの、何故か私の友人には山屋が多く、その中で年配の方がよく知っていると言うことで、その話を伺ったことがあった。なんでも常に黙っていて、二人きりで酒を飲んでると、こちらがいたたまれない気持ちにさせられると言っていたが、一旦冒険の話を始めると、喋り続けるような人だったとか。言うなればオタクそのものの人物だったようだ。多かれ少なかれ山に取り憑かれた人間というのはそう言うものっぽいが、彼の情熱は本当に自分の体を痛めつけるかのような冒険に全て傾けられていたのだろう。私自身かつてそう言う人間に憧れていたけど、いつの間にか世事に巻き込まれてしまったなあ。

 植村直己の自伝を読んだりすると、度々「公ちゃん」と言う名前が出てきて、本当に愛しているのが分かるのだが、それを超えた所に男のロマンがある。

 ただ、そう言う人間は本人はとにかく、周りの人間にとかく迷惑をかけるもの。碌々仕事も出来ず、自分を放っておいて世界中を飛び回るような人間の奥さんはとても大変だっただろう。それで本作はむしろ彼を支える奥さんの方に焦点が当てられているのが特徴。それがはまった。この二人の関係がとても良く、駄目人間を支える奥さんの暖かい雰囲気が良く出ている。

 それでほとんど登場人物二人だけの物語になっているが、この二人が顔を合わせているシーンが少なく、ほぼ物語は二分化。お互いに孤独な状態での物語が展開する。そして離れれば離れているほどお互いを想い、そして一緒にいるとお互いに傷つけ合ってしまう。こんな二人を西田敏行、倍賞千恵子共に上手く演じきってる。その中にある生活感の描写がなんかとても心地良い。暗い部屋の中での貧しい食事シーンなんかが上手くはまってた。

 本作は世界中で撮影が行われたそうだが、本作及び『敦煌』(1988)のお陰ですっかり西田敏行は「局地役者」などと言われるようになったとか。

(評価:★3)

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