宇宙人侵略モノと聞いて、私は勝手に『インディペンデンス・デイ』系の話を想像していた。勿論、『シックス・センス』を見てシャマランの芸風をとりあえず理解していたのだから、そんな事はありえないのだが、何故か思ってしまった。

しかし、実際見て一番最初に思い出したのはヒッチコックの『鳥』。後に、シャマラン自身がヒッチコックファンと聞いて激しく納得した。宇宙人侵略モノというのに前代未聞の静かさ。家族達は決してあの田舎町から出ないし、最終的には家にこもりきり。完全な密室だ。鑑賞している私達ですら、与えられる情報はTVとラジオの間接的な映像のみ。まるであの世界の住人であるかのような錯覚にすら陥る。そして、あのホームビデオに映った宇宙人の衝撃!スクリーンの前で多数の人間がブラウン管で口を押さえるホアキンと同じような顔になっていた事だろう。私もその1人。この見せ方は見事としか言いようがない。実際の描写は少ないのに、宇宙人襲来をここまでリアルに見せられるのは監督の手腕だろう。全体に漂う恐ろしいまでの張り詰めた緊張感はどんな恐怖映画にも勝る怖さだ。鑑賞中は体がカチコチになってしまった。

そして、『サイン』の意味。ずっとミステリーサークルのみの事だと思っていたが、違った。すべてがあのラストに繋がる兆候……。物語の収束の仕方もなかなかのもの。私としてはシックス・センスより見応えがあった。まあ、ラストのB級テイストな宇宙人は苦笑モノだが……。しかし、それがあったにしても、全体の出来としては完成度が高いと思う。

最後に、最初に言ったように、シャマランはきっとコメディもイケると思う。ホアキンが銀紙をかぶっている絶妙な間なんてコメディのそれだ。ヒッチコックは独特なユーモアのある監督だった。シャマランもここまでヒッチコックを意識できるなら、一風変わったコメディ等も撮ってみたらどうだろうか(ヒッチコックはコメディ監督じゃないけど…)?私はとても見てみたい!