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[コメント] デルス・ウザーラ(1975/露)

人と別れるとき、少し歩き出してから振り返り合図を送りあう。とても好きな人、滅多に会えない人、もう会えそうにない人、そんな思いが人を振り向かせる。
なつめ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







第一部の終わり、二人の別れ際お互いの名前を呼び合う場面がまっすぐに響いてきた。

第二部での再会から楽しいひとときを過ごすまでは、季節もまだ待ってくれている。しかし、めぐってきた冬は人生に例えれば終わりの時。キセルをなくしかけたところで大切なものをなくす時は自分の身代わりということを思い出し、いやな予感を感じ始めていた。虎を撃ってしまってからの彼の変貌は、やはり罪の意識が身体を蝕んでいったということなんだろうか。

お互いの友情…というよりは戦友というほどだろう…は成立していた。でも、「住む世界が違う」ということが個人同士のつながりをも超えて厳としてあるのもいやというほど突きつけられ、正直、あんなデルスを見ているのは耐えられなかった。つまり、第一部と第二部の対比は素晴らしいが対比のコントラストが効きすぎててみるのが辛すぎる。

最後、デルスは銃ももちろん、そのほか何も持ち物を持っていなかったと言われていたけれど、「密林を一緒に歩いてきた人」と表現された木の枝(杖)はちゃんとそこにあった。銃は命と引換えに取られたが、警察官の目には持ち物として認められなかったそれは残り……。最後がオープニングへつながることを思い出すと徹底的に残酷だ。

素晴らしい、けれど再びみたくはない……。そんな矛盾した気持ちを抱かせた作品。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (9 人)けにろん[*] 甘崎庵[*] いくけん ペンクロフ[*] Yasu[*] ymtk[*] たかやまひろふみ KEI ina

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