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[コメント] 大日本帝国(1982/日)

これは右翼映画の衣を借りた反天皇制映画である。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







東條と昭和天皇を擁護するトーンが強調されている。だが、強調すればする程・・・

特に獄中で西郷輝彦がカメラ目線で語りかける台詞は我々観客に問うている。この辺りでようやく気づく。

昭和天皇の顔を意図的に映さない戦争映画は多い。顔を映さずに肩から下だけ、もしくは声だけという邦画作品は多い。だが、この作品は昭和天皇を正面から、そして何回となく登場させた。顔を映さない作品は、天皇の戦争責任を「あやふや」なものとして処理しようと苦心しているのに対し、この作品は正直にも正面から扱ってしまっている。

全体としては東條と昭和天皇を擁護するトーンが強調されている。しかし、ここまで天皇を描いてしまっては、誰がみても開戦を決断し遂行したのは誰だったのか一目瞭然となる脚本になった。

最後の東京裁判で東條がいかに天皇免罪の言を述べようとも、いかに東條の人間性を描こうとも、強調すればする程それは逆の意味を強調していく。

二百三高地』の舛田と笠原のコンビがどれほどのたいそうなメッセージを盛り込めるかは甚だ疑問である。疑問ではあるが、ここまで確信犯的なシナリオは娯楽映画としての邦画史上でそう滅多にあるものではない。

西郷がカメラ目線のクローズアップで語りかける台詞。クリスチャンで反体制的だった篠田にあえて「天皇陛下万歳」を叫ばせる。やはり、これはどうみても確信犯だ。制作年度は昭和58年、未だ昭和天皇は在位中である。ATGが左翼臭たっぷりで制作した作品ならともかく、オールスター娯楽巨編と銘打った本作でここまでやるとは「ある意味」たいしたものである。

(評価:★4)

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