[コメント] ロープ(1948/米)
1シーンを1カットで撮り、カメラ割りも編集もしない、完全同期の同時進行作品。
当時の批評家は「革命的」と評価したらしいが、これのどこを見て評価すれば良いのだろう。確かに最初から最後までを継続した1ショットで撮るなんてことは画期的だろう。
だが、それに伴う代償が大きすぎた。
当初私が違和感を感じたのが、台詞と俳優の口が同調しておらず、安直な「吹き替え版」を見ているのかと感じたのだ。後で調べるとこの理由が分かった。
狭いセット内をカメラのクレーンが動き廻る為、セット内の家具のすべてにキャスターが付けられ、狭いセットは絶えず俳優とカメラと家具・壁が動き廻るさながら戦場のような状況だったという。そしてその大きな騒音の為に、撮影終了後に台詞は後から録音された。・・・これは大失敗、とてつもなく下手である。
だが、違和感はこれだけでは済まなかった。
この作品は元々は舞台劇『Rope's End』の映画化なのだが、ヒッチコックはブロードウェイの劇作家にさらに台詞を追加させた。
結果はどうか。私は日本語の字幕を頼りに見た訳なので、結果として凄まじい量の字幕と格闘する事になったのだ。
一瞬のカットに大量の字幕、それも二人・三人の台詞が同時に表示され、しかも上記の如く俳優の口と同調していないが故に、誰が何を喋っているのか大混乱であった。
さらに酷評させてもらえば、舞台劇にありがちな空疎な台詞、もったいぶった似非哲学的な台詞などが怒涛の如く押し寄せてくるのだ。これらが緊張感を押し流して行き、およそサスペンスとは言えぬ代物に成り下げてしまった。
まさに苦痛の80分。ヒッチコック会心の失敗作と断言しよう。彼の持ち味はリズム感溢れるカット割りと編集(モンタージュ)にあったという事が逆説的に理解出来たという意味では評価出来なくはない。のだが・・・
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