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[コメント] 姿三四郎(1943/日)

私も三四郎のように悟りたい、闘いたい。 礼儀作法を重んじる日本伝統の武道というものをわかりやすく描いた作品だと思います。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







姿三四郎が一輪の蓮の花に悟るシーンと、檜垣源之助との荒野の決闘シーンは特に印象的です。この「一輪の花」と「荒野と風雲」は、あとから何度も鮮明に頭に蘇ってきます。ミクロとマクロ、スタティックとダイナミックの対比としても、実に見事だと思いました。

悩める三四郎の姿が、(不思議なことに)ごく普通の人間のように感じられ、ものすごく親近感のある存在であったのも印象的でした。

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少々話しがそれますが・・・、一輪の花といえば、戦国の知将、黒田官兵衛を思い出します。

戦国の昔、信長の勢力が一気に拡大した頃、信長の重臣荒木村重が謀反を起こします。このとき、官兵衛は決死の覚悟で村重の説得に赴きます。しかし、信長に反旗を翻した村重の(こちらも決死の)覚悟は覆せず、官兵衛は一年間も幽閉されてしまいます。このときの幽閉状況はあまりにひどく、飯もトイレも一緒くた、体を十分に起こすだけのスペースすらなかったという話しは有名です。(解放後の官兵衛は、普通に歩くことが出来ないほど、足を悪くしてしまいます。)

常人であれば狂死か絶望死するような状況で、官兵衛は一年間もどのように生きる力を持ち続けたのしょうか?

それが、「一輪の花」なのです。

ある日、薄暗い洞窟の中で官兵衛が目を覚ますと、檻の外から天井部に緑色の蔓らしき物が垂れているのが見えました。蔓は日に日に伸び、葉を成し、そして一輪の藤の花を咲かせたというのです。官兵衛は大いに感動し、ここに悟りを得、生きる力を得るのです。(この経験から、黒田家の家紋は藤の花となりました。)

晩年、彼は家督を息子の長政に譲り、名を黒田如水と改め、秀吉・家康以上と言われる(自負する)その智謀を天下に試すことも無く、「水の如く」余生をおくるのでした。

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(本作を鑑賞するまですっかり忘れていたのですが・・・、)

私も会社の寮に暮らしていた頃、会社と寮の往復の生活に苦痛を感じ、(何を思ったのか、)あまり日当たりの良くない部屋に雑貨屋で買ってきた鉢を置き、朝顔の種を植えたことがあります。

朝顔のもやしのような芽が、精一杯光を浴びようと着実にゆっくりと窓際まで伸びていく様は、生命の弱さと強さを象徴しているかのようでした。そして、つぼみが出来、ついぞ花が咲いた時には、それはもう言葉に表せないぐらいの感動をしたものです。

そんな気持ち、大事にしたいです。

(評価:★4)

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