[コメント] ファースト・マン(2019/米)
To His Moon...
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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娘を失ってから、彼の時間は止まっている。体は生きていても、心は死んでしまったに等しい。妻や息子たち、NASAや国家への務めなどは総て、ニール・アームストロングにとって「近くて遠きもの」でしかなかったのではないか、とチャゼルは語る。
ある夜、同僚の葬儀から抜け出したニールは「家族と一緒にいてやれ」と諭されるが、彼は「誰かと話したくて庭にいると思うか?」と激昂する。もう、彼の心はここにはなかった。かつて娘と見ていたあの小さな月が、娘の魂の宿る「遠くて近きもの」として、彼の心をとらえていたのだろう。
乾ききった月面の《静かな海》へと降り立った、ファースト・マン。クレーターの墓穴の闇に消えてゆく、娘の名が刻まれたブレスレット。長い葬いの旅はようやく終わったのだ。帰還した地球で、ガラス越しの妻へその想いを伝えるのに、どうして言葉など必要だろうか?
『メッセージ』のような作品を通過したいま、こんなプライベートな視点で描かれる月面着陸の物語があってもいい、と思う。
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