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[コメント] ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション(2015/米)

好ましき《先祖返り》
Orpheus

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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バーグマン似でスタイル抜群の美女」が、キレのある殺陣で敵を次から次へとなぎ倒すなんて、完璧すぎやしないか?…というのが、最初の所感。いや、それぐらいのヒロインじゃないと「究極のイケメン」として熟成した感のあるトム・クルーズには釣り合わないということか。それにしても、謎の女と機密データを辿るアイテムが口紅というのは実に分かりやすい設定だが、この完璧なレベッカ・ファーガソンに命を救われた上に、「これ、高い口紅なの」(それとも「お気に入りの口紅なの」だったか?)と言い残されたら、さすがのクルーズだって平常心ではいられないはずだ。が、ここで愛する嫁を遠くから見守るクルーズという前作からの設定が効いていて、女の目的が分かった後もクルーズファーガソンからほど良い距離感を保ち続けるので、男が女を守るという時代遅れの枠にはまらず、最後まで男女で共闘する様が描かれている。おそらく次作では間違いなくファーガソンがチームの一員になっているものと想像つくが、その意味では本作は信頼できる仲間を得ていくプロセスを描いた作品でもあるのだろう。

話は戻って、冒頭のスカイ・アクション。これはシリーズ未見の観客にチームメンバーが誰なのかを手っ取り早く認識してもらうためのシーンで、クルーズのアクションに目が向いてしまいがちだが、メンバーの中で最も「組織寄りの調整方」であるジェレミー・レナーが、現場メンバーをコントロールできない様子もしっかりと描かれていて、その後の《上司の許可無くば何も話せない》という小ネタを挟みつつ、IMF解体から復活までの《組織としてのIMFの状況》をクルーズ達とは異なる立場から描写することで、ストーリー展開に奥行きを与え、アクション一辺倒にならないよう配慮されているのも好ましいところだ。

そして、本作を面白くしている最大の鍵はやはり、クルーズのバディとして「愛すべきボケ担当」をユーモラスに演じたサイモン・ペッグだろう。冒頭で述べたファーガソンクルーズとアクション面で共闘しているのに対し、ペッグはミッション面で共闘(正確には同行)しており、裏方のレナーを含めて、個々のメンバーがチームとして役割を果たしている。英国出身のペッグはコメディアンとしてキャリアをスタートしているだけあって、笑いのタイミングは絶妙で、情報量の肥大化とカメラワークの先鋭化を続けるハリウッドの怒涛のアクションシーンの奔流の中を、さながら往年の英国TVドラマ風の《ウィットの小舟》で激流下りをしているかのような面白さがあり、ガチなクルーズのアクションシーンの緊張感を適度に解きほぐすことに成功している。この英国的な《余裕ある要素》を待っていた観客も少なくなかろう。デ・パルマから始まった映画版『ミッション・インポッシブル』シリーズも、本作においてようやく《先祖返り》を果たした感がある。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)ゑぎ[*] プロキオン14[*] ロープブレーク[*] ALOHA MSRkb[*]

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