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[コメント] 穴(1960/仏)

穴掘り作業の緻密さにダイナミックさが融合しているのが良いんだろう。5人の精神的触れ合いの描写がちょっと少ない気がするけど話の展開からすれば必然の措置かな。
drowsy

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 数多ある脱走ものの中でこの映画が輝いていられるのはやはり人物間の距離のとり方が巧いからだろう。獄中で脱走を謀る5人の間に緊張感が常に張り詰めている、最後の最後までお互いに向ける目が他の映画と違い厳しい。他の映画だと大抵脱走者vs刑務所と言う構造で脱走者側はいつも強い仲間ムードが漂っていた。その違いが絶妙なスパイスとしてこの映画に活きていたといえる。

 脱走ものはえてしてワンパターンに陥りやすいものである。なぜなら大体穴を掘って成功するかという話を正味2時間続けるものだからだ。よって作品のクオリティーを左右するのは人物の魅力に帰結する。ワイルダーの「第十七捕虜収容所」は十八番のユーモアセンスが素晴らしく、最後の名作脱走もの(?)「ショーシャンクの空に」はもはや穴を掘るシーンなどラストまで描かれていない。ではこの映画には何があるのか?それは脱走における「場」の転換だと思う。徐々に進み行き一度はジャバの空気を吸っている。ゲームで言えばRPGの要素が働いていると言えるのかな。それに響き渡る轟音が脱走そのものに力強さを加えているのだろう。

 この映画のキーである鏡で廊下の様子をチェックする行為をばれずに続けるのは無理だと思うが、ラストの大挙して来た看守達が映るシーンの秀逸さにそれも許したくなる。だがそれが裏切りによるものなのか自白剤でも飲まされたのか、そこをはっきりしてくれよ、と言いたい。

 だがこのとりとめのない文の最後に記しておきたいのが、この映画を見終わった後に物足りなさが込み上げてきたことだ。やはり脱走ものの範疇を抜け切れなかったと思う。けど脱走もののファンと言うのはどれ位この世界に存在するのだろう?僕の偏見かもしれないが脱走もののファンでない人間が手放しに褒め称えると言う脱走劇は存在するのだろうか?上記において脱走ものの特徴と言える点を挙げてみたりはしたが、どうしても脱走ものだけは画一性を感じてしまう。だってみんな大雑把に言ってしまえば<刑務所から逃げようとする話>なんだもの。一作品だけが群を抜いてってことはあるのだろうか。脱走ものの限界を何となく感じてしまったりもした。まぁ、「CUBE」あたりは新脱走ものと言えるのかもしれないけど。ともかく人物描写の魅力に重きを置く作品は「ショーシャンク」が極めてしまった。次はどんなアプローチがあるのだろう?

 PSそれにしても主人公の男ごっついなぁ…。エジムンドみてぇ。

(評価:★4)

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