日本人の宗教とのディスタンス（距離）を描いた作品。

日本人の宗教観が表れている。「宗教」と聞いて「怪しい」とか「危ない」とか「ウソだ」と反応してしまうのが今の日本人だと思う。特に「新興宗教」と聞けばなおさらであろう。しかし、否定は出来ない。宗教が悪いものではないと考えるからである。人それぞれであるし、それにより救われる人もいるのであろうとも思うからである。なにより「宗教」が身近ようで身近でないのが今の状況ではないであろうか。

何を言いたいのかこんがらがってきたが、身近な人が宗教にからんだときに、自分はこの映画の伊勢谷さんのような反応をすると思う。肯定もしずらいが否定も出来ない。「いろんな人がいるのだから」と、「危険」ではないかという不安を持ちつつ、その人を引き止めるすべを知らない。人と人との距離もある意味「冷めて」いる現代人にとって、奥まで入らずに傍観というかたちになってしまうのではないか。逆に必死に止めようとしても平行線をたどる夏川結衣さんのケースになってしまうのではないか。

日本人すべての人に送る是枝監督の問題提起。やっぱり否定すべきなのであろうと自分は取ってしまうが、そんなものでないであろう。今まで描かれなかった加害者側の苦悩を描き、同じ人間なんだと伝えたかったのではないか。そんな広い視野をもった是枝監督らしい作品だと思った。すべての人へ向けた温かい目をもった人だと思った。