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[コメント] 切腹(1962/日)

橋本忍を語る上で外せない作品。特にこのシナリオのポイントが原作の構成にはない井伊家覚書の中で津雲半四郎と斎藤勘解由の対立はナラタージュを効果的に用いた回想形式の中で生かされてることを見逃してはならない。
斎藤勘解由

「寛永七年十月十二日。晴。朝、冷気殊の外強く、庭の菊に初霜を見る。」と井伊家覚書がはじまり、映画『切腹』のドラマはこの覚書を読み、その奥を探り、裏に秘められている事実を、次第にあらわしていく。

「サンデー毎日」に掲載された「浪人異聞記」が原作。 橋本忍の話によればカンヌで見たカヴァレロヴィッチの『尼僧ヨアンナ』のポスター見て『切腹』の画が浮かんだそうだ脚本は2週間で仕上げられた。 そこへたまたま小林正樹が時代劇を一本書いてくれと依頼を受けて差し出したのがこの作品であり、小林は即座に松竹本社に持って行き決まったそうだ。

小林監督の演出も見事で小林にとっては本作品が時代劇初挑戦ながら、もともと小林は日本美術に造詣が深くそれが作品にも反映されている。

津雲半四郎演ずる仲代達矢は撮影時27,8歳ぐらいでその演技力は海外でも賞賛されている。また対立する斎藤勘解由演ずる三国連太郎や沢潟彦九郎の丹波哲郎、そして見事な切腹シーンのアトラクションを披露する石浜朗の名演も見逃せない。

津雲は体制側の封建武士気質としきたりを愚弄しながら、復讐のとりことなって阿修羅のように奮激するのである。

(評価:★5)

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