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[コメント] ゼロ・エフェクト(1998/米)

謎解き好きには勧められない探偵映画。わがままで傲慢で自称天才のひきこもり探偵・ゼロが、初めての恋をして、友情を見つめ直して、ちょっと人間を好きになる話。
mize

 ビル・プルマンとベン・スティラー共演で、主人公がひきこもりの天才私立探偵。雑誌の映画紹介欄のあらすじを読んで、コメディ仕立てのミステリーなのか…ちょっと面白そうかも、とも思ったけれど、ひっかかるモノもあった。探偵に振り回される代理人役がベンなのはいいとして、なぜわがままな主人公がビル・プルマン…? ビルが嫌いなわけでは決してないが、シチュエーションコメディとしては今ひとつ判りにくいキャスティングじゃないのか。この映画はもしかすると、ちょっと変なんじゃ…という期待があった。

 はたしてちょっと変な映画だったわけだが、まず事件が劇的に盛り上がらない。全編に漂う雰囲気もなんだか冬の空気のように静まりかえっていて、みんなどこか孤独。それでいて辛気臭くなく、乾いたユーモアがある。

 探偵ゼロのひきこもり具合も微妙だ。もっと笑えるくらい大袈裟にひきこもって、一歩も外に出られない探偵なのかと思っていたら、仕事となるとわりと行動するし、社交辞令だって言える。なんだ自分と同じじゃないか…。唯一の友人(?)である代理人には傲慢に当り散らす内弁慶。そもそも今までの映画に出てきた典形的なキザな探偵の方が、自分にとってはよっぽどファンタジーな存在だ。ビル・プルマンの地味〜なルックスがまたリアルだし、わがままだけど憎みきれない困った大人子供をあんなに巧く演じられるのが少し意外だった。

 最初から好みの雰囲気の映画だったが、終盤にきて軽く驚いた。解き明かされた謎にじゃない。それはまるで雲が切れて陽の光がパーッと窓から差し込んで、部屋の中が一瞬にして別の場所のように表情を変えたりとか…細い路地を歩いていて、角を曲った途端思いがけない景色が広がっていた、みたいな瞬間が待っていた。その時自分はこの映画を好きだと思った。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ガム ナッシュ13[*]

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