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[コメント] 涙(1956/日)

「ただのメロドラマじゃん」ってなめてかかると・・・
若尾好き

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭で、この映画のテーマ曲の歌詞が映し出されて、「うわぁ、こりゃとんでもない映画だぞ」って違う意味で構えたが、映画が終わる頃には「なんて、いい曲なんだ〜」って「涙」ウルウルの自分がいた。

もちろん、この映画の題ではある『』は、「ハンカチのご用意を」などというベタな理由で付いているわけではない。むしろ全く反対で、この映画、設定自体は絵に描いたようなメロドラマなのに、「あざとくない」のである。いうならば、お涙頂戴的な演出を避けて、人間を取り巻く風物の中で淡々とドラマを展開しているのだ。

例えば、砂丘のシーン。二人の男女がとぼとぼと歩む姿を、遠景からカメラはとらえる。発想自体は新味が無く凡庸かもしれないが、その美しさは絶品で、川頭がストーリーではなく映像で語れる監督の一人であったことを証明している。そして、重要なのは、その時のカメラが温かみよりも、ドライな印象を与えるということだ。

川頭義郎の映画はその題材選びなどに、師匠である木下恵介の影響が顕著である。しかし一方で、その「演出」は師と一線を画していたといえる。川頭の演出は、師のセンチメンタリズム一色の映画とは程遠いのだ。

彼は、長らく師の名声に隠れていたが、最近、再評価の機運が高いと聞く。 ようやく、彼の「さりげなさ」に涙する時代が来たのだろうか?もっと長生きして、沢山映画を撮ってもらいたかった監督の一人であることは言うまでない。

※あっそうそう、大事なこと忘レテマシタ。この映画でオデコ出した文子たんの端正な顔に、わたくし惚れ直しました。

(評価:★4)

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