コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 影武者(1980/日)

相変わらずの黒澤時代劇。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







相変わらず、と言えるほど黒澤作品は見ていない。全30作を今年中にみようと思っている。馬と歩兵の人海戦術を写し画面は迫力がある。ただしそれが戦闘にどう関わっているかわからない。物量作戦を実際にやってみてそれを記録しています、という印象。実際やってみて撮影できないところは画面にしていない。鉄砲隊に打たれる騎馬兵。黒い馬から落ちる影武者。それがみたいのに、それはできなかったので画面になっていない。これは黒澤が意識して取らなかったのではなく、実際にできないので撮らなかったのだ。要は実物の迫力が黒沢の頼みの綱。画面は恐ろしくきれいで決まる。しかしこの物語は、おもしろくなるところが、遠くで見る舞台劇のようでまるで映画的じゃない。それが「芸術的」な効果を生んで外国人の評価が高いのだろう。

四十年経ってみると、勝新の代役が仲代達矢(つまりは勝新の影武者ね)になったなどという事情とはほぼ無関係に鑑賞できた。相変わらず夢のシーンがまるで夢っぽくなく、作り込んだ抽象的な背景セットの前で一人悪夢の演技をする仲代達矢を見ることになって、まるで夢を経験することができない。(フェリーニ、8と1/2の冒頭の夢と比べれば明白)映画の中の時間が実際の時間。これが実物主義で事実の事物ほど人を打つものはない、とかたくなに信じているようだ。ドキュメンタリーの手法でファンタジーをとる無理筋の方法だと思う。それがつまりは相変わらずの黒澤映画。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (6 人)緑雨[*] ぽんしゅう[*] ナム太郎[*] ペンクロフ[*] 寒山拾得[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。