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[コメント] 天国と地獄(1963/日)

人情と社会正義
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







amazon primeに黒澤作品が入っているを見つけた。晩年の楽しみとしてはこれを見ない手はない。

黒澤明は人情家だと思った。そう考えないとこのドラマは成立しない。三船が悩むのはお抱え運転手の子供を見殺しにできないからである。そのため自分の立場を捨てて捜査に協力する。捜査員はこの三船のために犬になる決意をし、新聞社に情報操作を依頼し最後は犯人を泳がしてヤク中の死者までだして違法な捜査を貫徹する。悪を正すためになんでもやっていい、悪い奴は死んでも構わない、この前提の元が人情である。資本家に対する感情もそうだ。

山崎努演ずる犯人の動機と設定があまりに表面的。彼のいわゆる地獄は3畳のアパートだけなのか。身の上話をしたくない、といわせただけでは、この犯人の存在に説得力はない。三船の直情には十分な説得力が与えられているにもかかわらず、だ。上流階級に怨嗟の目を向ける犯人が医者のインターンだというのは今から考えると無理のある設定だと思えるが、才能ある貧乏人が手に職をつける手段として医者を目指すと言うのは当時としてはありそうな話だ。今ほど医者が天国の住民とは思われていない。現在の東大理三ができたのは1962年。理一の方が頭のいい奴がいくという社会的評価だった。

ビジネス特急こだま、59年のトヨペット、三船の車はベンツ、この映画のできた1963年私は中学三年生。ロケハンもきちんとしてあって、当時の外食の値段もちゃんと写っている。黄金町のモブシーンがやたら長いし子供が助かってからの展開はむだに長い。最後の接見にもドラマはない。半世紀以上すぎて鑑賞に耐えるのは、やはり前半の細部に拘ったサスペンスだ。黒澤はまちがいなく鉄道マニアだと思う。まあだだよ、の内田百間も鉄道マニア。

今年アカデミー監督賞のポン・ジュノはこれを見てるな(どこかでそう言ってるかもしれないが)と思った。こういう形で映画がひきつがれていくのを確認した気になるのは楽しい。

ネット視聴で300円払ったが、当分これはやめられない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)Orpheus 緑雨[*] ぽんしゅう[*] けにろん[*] ペンクロフ[*]

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