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[コメント] 隠し砦の三悪人(1958/日)

スゴイ作品を見てしまった。世界中の監督からリスペクトされている黒澤明の魅力をこの歳になってようやく理解出来始めた気がします。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







高校生の頃に『七人の侍』とこの『隠し砦の三悪人』を観たのですが、当時は自分の中で全く面白くありませんでした。というよりも理解出来ていなかったのだと思います。だからほとんど記憶にありません。それ以来、時代劇とか昔の邦画というのは自分にとって苦手分野となってしまいました。今回この『隠し砦の三悪人』が私の(?)松本潤主演でリメイクされるという事で、ある意味仕方なく観直してみた次第です。

オープニング、やっぱりどうも入り込めない。何が原因かって台詞が拾えないんです。何を言っているのかよく聞き取れなくてイライラして、やっぱりやめておけばよかったって思っていたのもつかの間、あの捕まった農民達の大脱走シーンで度肝を抜かれてしまいました。もう画面に釘付け心臓バクバク。何の変哲もないシーンでどうしてこんなに興奮したのか分からないんですが、もう凄かった。画面から伝わるダイナミックな人の流れ。これって今撮ろうとして果たして撮れるものなのだろうか?って思ってしまいました。何がこんなに凄いのかって正直分かんないんです。でも何だろう。当時の人間の体の造りからしてもう現代人とは違うんだと思いました。痩せ細っていてそれでも労働をしている者の体つきっていうのか、舗装されていない道を裸足で歩く逞しさというのか、現代人であの動きは絶対出来ないと思いました。同様に太平と又七が上り坂でグダグダごろごろやったりしているシーンも無駄にインパクトがあるというか、先に述べた体の造りの違いから来る迫力なのかなーと思いました。

それから真壁六郎太が敵を追いかけて馬上で刀を構え疾走するシーンはええぇぇぇええ!!!!ってなりました。何これよく分かんないけど特撮?って思ってしまったんですが、アレって生身で普通にやってるんですよね。スゴイ!!もう瞬き忘れるし鼻息荒くなるし大変でした。三船敏郎普通にかっけぇ!!!

他にもインパクトのあるシーンが沢山あったんですが、視覚だけじゃなく聴覚にもインパクト大だった事が驚きです。観始めた時は聞き取りにくいと思ったあの雑な音。あれが妙にツボにハマったし、あとね、太平の声が無駄に可愛い。弱気になって又七にすがったりする時の声質とかイントネーションとか、非常にツボでした。もちろん雪姫の甲高いファニーな声も徐々にツボ。バックに流れる音楽も耳障りが良く、印象深いです。

ただ、一つ一つのシーンが持つスピード感は尋常じゃないのに、全体を通して見ると若干テンポが悪く感じました。シーンの繋ぎが荒いのか、そこで失速してしまうというか、もたつく感じ。もったいない。あと無駄に長いかなーとも思いました。何か不要なシーンがあったかと問われても、それは「ない」と答えてしまいそうなんですが、やっぱりシーンごとの繋ぎ目に感じる失速感でテンポを失った結果、長く感じてしまったのかなーと思います。あの単体シーンが持つスピード感を全編通して感じていられたら、そう長くも感じなかったと思います。

いやしかしスゴイ作品を見てしまった。こりゃ『七人の侍』ももう一回見直すべきだな。世界中の監督からリスペクトされている黒澤明の魅力をこの歳になってようやく理解出来始めた気がします。

それにしてもこんな名作のリメイクって相当荷が重いだろうと思いますが、潤くん頑張れよー!公式サイトの予告を見る限りではある程度期待出来そうな雰囲気が漂っていたので、不安もありますが公開を楽しみに待とうと思います!

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08.01.25 記

(評価:★5)

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