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[コメント] 虎の尾を踏む男達(1945/日)

黒澤明初期作品という事で、全盛期の頃の勢いや力強さはまだまだ弱いと感じましたが、奥ゆかしさを秘めているところがやっぱり黒澤作品だなーと思いました。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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安宅の関での勧進帳を題材とした作品だったので、ちょっとビックリしました。安宅の関って言ったら石川県民(特に加賀地方の人)には馴染みの地で、小学生の時には安宅の関に行ったり、勧進帳のエピソードや冨樫の漢っぷりをクドクドと習います。今も毎日安宅を通り、弁慶と冨樫の石造を横目で見つつ通勤しているんですが、そんな身近な地でのエピソードを黒澤明が映画化していたなんて!と、なんとなく嬉しくなりました。

そんな訳でストーリーは全て分かっているので、若干(というか勧進帳を読むくだりなんかはパーフェクトで)台詞が聞き取れなかったんですが、大丈夫でした。ただ、全くこのエピソードを知らない人が突然観ても、その全てが伝わるような丁寧な作りではないとは感じました。しかし大河内伝次郎の弁慶はちょっと面白かったです。喋り方が完全に歌舞伎なんだもん。本当に存在感のある人ですね。(それが良いか悪いかは別として)←私は良いと思う派ですけど

それからラストの弁慶が頭を下げるシーンはとても良かったなぁ。弁慶の顔を全く映さないんだよね、あそこ。それが逆に良かった。あざとさなんてものは皆無なんだよね。黒澤初期作品という事で、全盛期の頃の勢いや力強さはまだまだ弱いと感じましたが、こういう奥ゆかしいところがやっぱり黒澤作品だなーと思いました。

というかこの作品はもしかして『隠し砦の三悪人』にかなり影響を及ぼしたのではないでしょうか。今作で富樫を演じた藤田進が『隠し砦の三悪人』では田所兵衛を演じているっていうのも単なる偶然とは思えないし。それから川本喜八郎の『花折り』もこの作品の酒宴シーンに着眼して作られたのではないかしら?とも思いました。なんとなくそんな気がしただけですけど。

それにしてもなんともハイセンスなタイトルだと感心しました。「勧進帳」とか「弁慶と冨樫」とかじゃちょっと見る気しないかも。

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08.05.27 記

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)シーチキン[*] ぽんしゅう[*]

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