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★3 | ベニスに死す(1971/伊) | 老いて悔いる男。少年によせた思いは、自らの再生願望の影。しかし、その“若さと美しさ”が放つ輝きは、最期に臨む者にはあまりにも過剰すぎた。ダーク・ボガードの心の沈殿物が滲み出すような芝居がすごい。 | 緑雨, ルリマツリ, 甘崎庵, ナム太郎ほか6 名 | [投票(6)] |
★3 | チャンシルさんには福が多いね(2019/韓国) | ふんわかした邦題が的を射ていていいです。突然、先を見失ったチャンシルさんは、偶然か必然か娑婆を離れて丘の上の一軒家に移る。そこは非難所だったのかもしれない。失った“福”を悔やむのではなく、かつて抱いていた可能性としての“福”の断片を感じること。 [review] | けにろん | [投票(1)] |
★4 | 大統領の陰謀(1976/米) | 矢継ぎばやな電話攻勢、カマを掛ける押しかけ取材、暗闇からのサゼッション、ブレーキとしての編集会議。話劇(わげき)とでも呼びたくなる言葉の洪水が推進力となって「点」を「線」で結び、おぼろげな「面」に迫るレッドフォードとホフマンの勢いサスペンス。 | 緑雨, 週一本, けにろん | [投票(3)] |
★4 | A2(2001/日) | オウムに甘える住民、河野義行に甘えるオウム幹部、集団行動に甘える右翼、読者・視聴者に甘えるマスメディア。真摯なふりをして行動すればするほど、一方の端にほころびが生じ馴れ合いが生まれる。その上に成り立っているのが日本社会なのかも知れない。 | KEI, TM(H19.1加入) | [投票(2)] |
★4 | 「A」(1998/日) | 了解不能なあちらの世界にいながら、こちらの社会に微かに足の先だけ残しているような荒木浩とうい男が世捨ての身でありなが見せた祖母との交流に一瞬理解の糸口が見えた気がする。しかし「誤解をするのは、いつも相手の側だ」という信者の言葉がすぐに蘇る。 | KEI | [投票(1)] |
★4 | スープとイデオロギー(2021/韓国=日) | 兄たちを北朝鮮へ送り出し、総連幹部の活動家だった父を支え、ひとり暮らしの老女となってもなを、借金をしてまで北朝鮮の息子や孫たちに仕送りをする母の(北への)思いが分からない。娘である監督が流した"涙"は、彼女の怒りにも似た疑義の氷解の証しなのだろう。
[review] | jollyjoker | [投票(1)] |
★5 | ONODA 一万夜を越えて(2021/仏=独=ベルギー=伊=日) | 小野田氏発見当時、日本人たちが美談に仕立てた「信念の人」という幻想に組することなく「弱いからこその過激な頑なさと」という人間の普遍を描こうとした志がいい。青年期と壮年期を別の俳優が演じる演出も「時の流れと、その悲愴」を象徴してとても効果的だった。 [review] | けにろん | [投票(1)] |
★4 | あなたの微笑み(2022/日) | 地方に限らず単館系映画館は絶滅危惧業種なわけで、登場する老舗館は郷愁を誘うとはいえ残念ながら死相が漂い(現に撮影後に何館かは廃業していて)上映文化の火を絶やすなと綺麗ごとを個人稼(家)業に頼るのは酷だろう。そんな本音がのぞく陽気なふりをした鎮魂歌。 | けにろん | [投票(1)] |
★4 | パリ13区(2021/仏) | 大きな瞳に自身の衝動への戸惑を浮かべつつ暴走し、人生のレールに乗れないインテリ崩れをルーシー・チャンが好演。柔らかなトーンのモノクロ映像が性描写の生々しさを中和して美しい女性映画。何といってもWebという“逃避空間の女”の存在が現代性を担保する。 [review] | disjunctive, けにろん | [投票(2)] |
★3 | 春江水暖 しゅんこうすいだん(2019/中国) | 人の営みを風景として捉える試み。風景はゆっくりと時間をかけて少しづつ変化する。変化が生む微細な違和を人は日々の生活に追われ直視しない。そしてある日、いつの間にか激変した風景に気づき、戸惑い、時の流れの力を知る。家族の関係もまた同じなのだろう。 [review] | けにろん | [投票(1)] |
★4 | セイント・フランシス(2019/米) | 状況や心情が揺らいだり変転するような事象は何も起きない。そんな顛末に見えてしまう平板な語り口だが三十路の子守り女ブリジットは周囲の無邪気な同情や侮蔑、妊娠や体調不純、軽率な恋愛衝動、レズカップルの育児不安や嫉妬不和と、厄介な現実に直面している。 [review] | ゑぎ | [投票(1)] |
★4 | 3つの鍵(2021/伊=仏) | 厳格という美徳による抑圧(父権主義)。静かに深く精神を蝕む孤独(家庭放置)。甘えと猜疑と遺恨(相互依存)。傷の浅い深いの差はあれど身に覚えがありそうなことばかりだ。確かに、起こしてしまったことにどう落とし前をつけるかに時間と労力を費やすことこそが人生。 [review] | けにろん, ゑぎ | [投票(2)] |
★4 | 野菊の如き君なりき(1955/日) | 弾けるようなカットバックと流麗な移動ショットの積み重ねが、二人の想いの強さと清廉さを醸し出し、政夫(田中晋二)と民子(有田紀子)の幼い思慕が思春期の戸惑いを経て互いの想いに気付き激しくも静かな恋心へと変わっていくさまが実に切ない。 | ジェリー | [投票(1)] |
★4 | 学校の怪談4(1999/日) | 妖怪オンパレードに終始した前作までとは、趣を異にしたファンタジー作品。奇抜な展開やトリックがあるわけではないが、シリーズ中では群を抜いた面白さ。仕掛けも気負いも無く淡々と描きつつ、最後まであきさせない平山秀幸監督の力量は本物。
| t3b, 水那岐, あき♪, ぱーこほか8 名 | [投票(8)] |
★3 | 神は見返りを求める(2022/日) | 何ごとも断らない男(ムロツヨシ)の自意識は他者に開かれているようで世界には閉じられている。表現の意味をはき違えている女(岸井ゆきの)の向上心は世間の暇消費に媚びているだけだ。主体性なき者の空回り。きっと吉田恵輔はこんな人たちが嫌いなのだ。 [review] | クワドラAS, けにろん | [投票(2)] |
★4 | そばかす(2022/日) | どこにでもいそうな地味め三十路の三浦透子と、いまだアイドル仕込みの押しの強さが滲む前田敦子。対照的な二人が、世間との相容れなさに諦めの境地にこもる佳純(三浦)と、鬱憤を推力にツッパりと居直りで世の中の矛盾に耐えている真帆(前田)をリアに視覚化。 [review] | ゑぎ | [投票(1)] |
★4 | 毒薬(1952/仏) | リアルを振り切って漫画的な夫婦の容姿と行動の醜悪さが殺人という不道徳を戯画化して、神父や弁護士の正義の正統性を形骸化してしまう。逆に事件をきっかけに町おこしを企む集団や、不倫や裁判を“ごっこ化”する子供たちの滑稽さが殺人という悪事を俗化してしまう。 [review] | ゑぎ | [投票(1)] |
★5 | 窓辺にて(2022/日) | 人物たちの当意を得た言葉が充分かつ最適な間(ま)で交わされるようすを、適度な緊張を保った視線で際立たせる会話空間の演出が絶妙。彼、彼女らはみんな自分に正直で他者に優しく、何も否定せず争わない。それゆえ生まれる"思い”のギャップが微笑や苦笑を誘う。 [review] | けにろん, セント, ゑぎ | [投票(3)] |
★3 | 死刑にいたる病(2022/日) | 優しく語りかける顔から徐々に感情が抜け落ちて、大きな泣き袋だけが浮かび上がる阿部サダヲの能面の不気味。獄中から指示を出す例の羊印の傑作を思い出す二番煎じの設定ながら、サイコパスのキャラは準備万端。でもそれだけじゃスリラーにはならない見本。 [review] | disjunctive, 死ぬまでシネマ | [投票(2)] |
★4 | 快楽(1952/仏) | 人の情(じょう)と性(さが)という確かに存在するが「無形」の煩悩を、カメラワークと編集テクニックで“有形”のエンターテインメントに仕立て上げる試み。 [review] | ゑぎ, KEI | [投票(2)] |