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[コメント] 人情紙風船(1937/日)

浪人海野(河原崎長十郎)と妻(山岸しづ江)に浴びせられる容赦なき仕打ちは、山中貞雄の過去の完全否定であり、止め処ない反抗心だけで突き進む新三(中村翫右衛門)の生き様は、将来の展望なき不確実さの具現だ。時代の空気と作家の足掻きが生んだ悲壮だろう。
ぽんしゅう

20歳代の作家が、こんな切実な映画を作る社会は、決してよい社会ではない。

余談だが、この20年ぐらいの中東諸国の映画に、同様な若い作家の沈痛な叫びそのもののような作品が数多くみられた。今後はアフリカや、旧東欧、旧ソ連邦諸国に、そんな映画が現れてくるのだと思う。いや、私が知らないだけで、すでに世界中のあちこにち、もう(山中の時代からすれば、まだ)溢れているのかもしれない。

(評価:★4)

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