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[コメント] アフター・ヤン(2021/米)

この近未来家族が暮らす社会は、どこか冷ややかで"生気"が感じられない。養子。クローン人間への偏見。唐突な隣家の双子姉妹。生成の顛末や定着の履歴が伏せられつつ人間社会に同化している人型AIロボット。人間は生殖能力を喪失してしまっているのではないか。
ぽんしゅう

観終わって巻頭のダンスバトルが物語のテーマを象徴して秀逸だったことに気づく。世界中の4人家族が参加し、本来は人間的運動であるはずのダンスが、機械のような非人間的運動の域に達するまで画一化され、その同一性の優劣が競われているようだ。見えてくるのは、エンタメ化してまでも家族の一体化を図らなければならない=人間とクローンとAIロボットの一体化を推進しなければならないほどの社会の「断絶」だ。

生物にとっての記憶は、究極的に遺伝子となて「断絶」することなく末代へと受け継がれる。AIロボットのメモリーに記録された映像は、はたして彼らの遺伝子に昇華し得るのだろうか。中国系の養女ミカ(マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ)の兄役を務める同じ中国系の容姿を持ったAIロボット・ヤン(ジャスティン・H・ミン)は、アジアの記憶をミカに伝えたいと言っていた。いままで英語で会話していたミカが突然中国語で話し始めたとき、ヤンの目論見は成就したのだろうか。

以前、ネットで見かけた芸術人類学者の中島智の一文を思い出したので引用しておきます。・・・〔引用〕AIが「AI自身の意識」に目覚めた場合、「人間の意識」はそれを理解できず、よって「AIに意識はない」と判断することになる

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