まず話しの主軸ですが、暴走すればするど上林(鈴木亮平)のファンタジーなキャラが浮き始め、本来なら徹底して「リアル世界の人」でなければならない日岡(松坂桃李)が、頑張れば頑張るほど物語の「破綻の溝」が広がって、その解離の狭間で物語的な行き場を見失ったチンタ（村上虹郎）君が、まさに右往左往しています。ようは上林(鈴木)のキャラに“無理してる感”がある。

さらに、その人格破綻の理由に、いまひとつ説得力がなかったり。ありがちな貧困の役回りを押しつけられた在日の扱いが、おざなりで雑だったり。それなりに豪華なメンツを揃えた割りに、親分衆の個性がステレオタイプで平板だったり。いやいや最後はこれでしょう！！ と、取って付けたようにカーアクションが始まったり。などなど、“無理してる感”がダダ漏れして、やっぱ「エンタメってこうだよね」な安直な魂胆が見え見え。

そもそもですが、おぼっちゃん顔の松坂桃李さんが、いくら凄んでみせたところで、倫理違反なんてなんぼのもんじゃい！な不良刑事(デカ)には見えないよなぁと思っていたのですが、どうやら作中の日岡という男がそもそも「ムリしてる男」なんだと。だから松坂さんこそが適役なのだ、というつもりの配役なのでは、と気づきました。確かにキャスティングとしては合理的なような気もしますが、そこは逆に安牌的に“無理しない役者さん”起用してみました、でいいのだろうか・・・と納得できたような、できないような・・・・。前作『孤狼の血』からのモヤモヤです。