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[コメント] 無頼(2020/日)

地方のヤクザ一家の組長の半生にダブらせて、戦後の昭和史の熱量を“今どきの若い奴ら”に見せて挑発しようという魂胆なのだろう。私はリアルタイムで“あのとき”の空気を知っているのでとても面白かったが、昭和55年以降生まれの人にはたぶん「???」だろう。
ぽんしゅう

いつもの井筒和幸のおせっかいな企みが成功したかどうか、疑わしい。

少年時代の主人公・正治(中山晨輝)が、荷台にアイスボックスを取り付けた業務用の大きな自転車で、アイスキャンディーを行商するシーンが出てくる。私にも微かに自転車のアイス屋さんの記憶が残っている。そういえば『青春の殺人者』の主人公(水谷豊)の父親(内田良平)も自転車のアイス屋さんだった。両方とも昭和30年代の話だ。なるほど「シネマは記憶装置」だと蓮実重彦さんも言ってたなあ・・・おっと、話が横にそれてしまった。

安保闘争、東京オリンピック、日本列島改造論の上り坂。オイルショック、三菱重工ビル爆破事件、ロッキード事件から田中角栄逮捕。バルブ経済の狂騒と破綻(ホリエモン風、登場)、民族活動家(野村秋介風)の挫折とマスコミ本社での自害。そして暴対法施行。そんな時の流れを、それぞれの時代を象徴するクルマの変遷でさりげなく見せるところも、時代の空気を知る者にとってはニヤニヤしてしまうほどリアルでした。

太陽の季節』のポスターから始まり『赤い天使』、『ゴッドファーザー』、『仁義なき戦い 頂上作戦』等々の無頼礼賛の無邪気なイケイケ風潮。『北陸代理戦争』(なんと完コピ再現!)へのヤーさんならでは感想や、アンチ・ヤクザ映画の主演俳優の優等生発言に愚痴る幹部衆と、いかにもありそうな疑似リアルも苦笑しました。

もう一度書きますが井筒さん、私は、面白かったですよ。

(評価:★3)

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