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[コメント] アルプススタンドのはしの方(2020/日)

素直に心に響く正論だ。私はすでに「しょうがない」を繰り返し日々を送る年齢だが、確かに、そう言わない方が良い“時代(とき)”があった気がする。すべての大人はあのとき、そう言われたくなかったし、言いたくなかった、と心のどこかで後悔しているのだろう。
ぽんしゅう

まだ知名度の高くない若い役者さんたちがフレッシュでいい。無名性が芝居としてのリアル感を担保し、ともすれば青臭く思える主張も、余分な力みが抜けて素直に納得させられてしまう。そういえば『桐島、部活やめるってよ』で、ずば抜けた“あるある感”をみせていた松岡茉優もこんな感じだった。

一方、ロケーションはどう見ても甲子園球場に見えない。これは地区大会の決勝戦くらいの話しだと思って観ていたので、途中で制作側は本気で甲子園のアルプススタンドを想定していることに気づき、その強引さにいささか呆れてしまった。だが観終わってこれも戦術だったのではないかと思った。

甲子園球場のアルプススタンドとは、青春期のメインストリームの象徴であり、すべての10代の若者には、それぞれの「アルプススタンド」があり、さらに不本意にも、その「はしの方」に座っている者たちが大勢いるのだという暗喩なのではないだろうか。

今年は『殺さない彼と死なない彼女』や『のぼる小寺さん』と、素敵な青春映画が多い。私が10代の頃(70年代)は、閉塞的な日常を暴力や性の衝動として発散するような青春映画ばかりだった。こんな爽やかな映画が観られるなんて、今の中高生たちはとても幸せだと思う。

そんなことを思いながら、明かりが付いた200余席の郊外のシネコンに集った20人弱の観客を見渡すと、コロナ禍のマスク姿でも分かる私と同じおじさん、おばさんばかり。ロビーは夏休み映画に集まった子供たちでごった返していた。

2020年8月記

(評価:★4)

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