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[コメント] 夕陽のあと(2019/日)

覚悟に満ちた“生みの親”の深い眼差しと、敵意露わな“育ての親”の鬼面の対峙が痛々しく切ない。解決不能の行く末定まらぬピュア過ぎる対立は、不謹慎にもスリリングだ。深刻な本能的「個の切望」は、柔和な共生的「公の願望」に帰結させざるを得ないという理想。
ぽんしゅう

そんな理想論が鼻白むことなく説得力をもって語られる。作中で過不足なく描かれ続ける小さな漁港のたたずまいと、活気に満ちた子供たちを見守る大人たちの姿が、止むにやまれぬ貫地谷しほり山田真歩の直截的な対立の熱量を、さりげなく取り込んでしまう冷却装置のように機能しているからだと思う。

越川道夫の監督作はほとんど観ている。どれも潤沢な予算で撮っているとは思えない。それでも決して映画が痩せて貧相になることなく、むしろ引き締まったテイストの佳作ぞろいた。プロデューサーとして『ゲゲゲの女房』や『海炭市叙景』、『楽隊のうさぎ』といった秀作を製作してきた手腕のたまものなのだろう。

(評価:★4)

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