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[コメント] ラストレター(2020/日)

未咲という名に込めた思いは“未来に咲く”だろうか“いまだ咲かず”だろか。どちらにしろ時間を止めたのは未咲だ。初恋の郷愁をベタに綴る岩井俊二に衒いはない。あるのはアナログな「カタチ」に人の想いをたくし止まった時間を手繰り寄せる巧みな映像話術。
ぽんしゅう

さすがの岩井もデジタルで郷愁は語れないようだ。スマホは早々に放棄される。電子メールは思い入れたっぷりの手書きの手紙となって四半世紀の時空を行き交い、新たな出会いと別れはピクセル画像ではなくフィルムに写し撮られて厚手のアルバムに納められる。本棚の隅の忘れられた小説本には、手書きのサインが印されて出会いの証しとして再生し、卒業式の答辞は娘への贈る言葉として甦る。そして同時代の高校生なら必需品のスマホを鮎美(広瀬すず)はただの一度も手にしなかった。

岩井俊二は記憶という「曖昧さ」を、確実にそこに存在する、あるいは存在した「カタチ」あるものに置き換えて、誰もがかつて共有した郷愁の「証拠」として提示する。だらか岩井のラブストーリーは、いつも気恥ずかしいまでに正直で、サスペンスの謎解のように明快なのだ。

ワンピース姿のふたり。あの夏の少女を見かけたのはいつの日だったろう。肌さす陽光ではなく通り雨のもとで。猛スピードで私の記憶が巻き戻る。

余談です。仲多賀井(ながたがい)高校の同窓会ってなんだ。意味深長な校名にあれこれ想像をめぐらせ深読みしよと試みたが、やっぱりただの言葉遊びで意味はなさそう。岩井さんに、まんまとしてやられたようです。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ゑぎ[*] けにろん[*]

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