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[コメント] きみの鳥はうたえる(2018/日)

なんと心優しい青年たちだろう。愛おしいほど真面目で不器用だ。男二人に女一人。アメリカン・ニューシネマやヌーベルバーグの青春? いや、彼らは背伸びし“未熟さ”を露呈し権威に圧倒された。殻に籠ったこの日本の若者たちは互いの“優しさ”に戸惑いすれ違う。
ぽんしゅう

おそらくアドリブを多用したのだろう。柄本、石橋、染谷の予測のつかない仕草や表情、会話が素晴らしい。惰性や停滞から解放された三人の悪気のない行き当たりばったりの、つかのまの「時間」の浪費。彼らの笑い顔が、明るければ明るいほど切なさが滲む。そこから立ち上がる屈託のなさは型にはまった芝居からは決して生まれないだろう。

その浪費は、まるで彼らが互いに口には出さない、いや口に出せない“優しさ”を探りあい、確かめ合うための儀式のようだ。そんな無意識に「ひと」を求め合う葛藤が、彼らの一見無為に見えるひと夏の儀式(交感)に薄らと浮かび上がる。特に石橋静河が素晴らしい。彼女の「オリビアを聴きながら」に、私は涙してしまった。

余談だが、顔立ちはそうでもないが、石橋は、ぶらぶらと、あるいは颯爽と髪をなびかせ歩く姿がお母さん(原田美枝子)の若い頃によく似ている。

それにしても佐藤泰志の小説の映画化は、どうしてこんなに秀作ぞろいなのだろう。本作の三宅唱監督は34歳。熊切和嘉呉美保山下敦弘、他の作品も監督はみな40歳代だ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)水那岐[*] ゑぎ[*] セント[*] 3819695[*]

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