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[コメント] 志乃ちゃんは自分の名前が言えない(2017/日)

画面に光が溢れている。ときに印象派の絵画のようにキラキラと、ときにくっきりと強い陰影を作りだし、高校生を包み込む光線。青春期とは、望もうが望むまいが、楽しかろうが辛かろうが、嫌がおうにも強烈な光にさらされている「危険で残酷」な時代のことなのだ。
ぽんしゅう

それは、誰もが避けて通れない危うい時期であり、ほとんどの大人は、その残酷さを目撃し、あるいは体験してきたはずだ。だから、私(我々)は、校舎や校庭の片隅に、なんとか自分ひとりの場所を確保して、この「危険で残酷」な時代に懸命に耐える者たちの姿を見て、声をかけずにはいられない。

だいじょうぶだ。まだ君たちの人生は始まって、たかだか15年か16年しかたっていないんだ、と。だがその言葉が、彼らの癒しになどならないこも、私(我々)は自分たちの「あのときの経験」から知っている。やっかいなことに「危険で残酷」な時代だからこそ、青春期の輝きは痛いほどにまばゆいのだ。

死ぬほど辛い日々に寄り添いつつも、彼らの苦痛を理解したふりなどしない。湯浅弘章監督は、そんな節度と距離を保ったうえで登場人物たちに向き合い、彼らの傷みを描こうとしている。本年(2018年)、屈指の真摯な青春映画だ。

(評価:★4)

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