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[コメント] ジュピターズ・ムーン(2017/ハンガリー=独)

はからずも神の宣託を受けた不安顔の天使は、さまようヨーロッパの処方箋を自らの肉体で啓示する。国境や駅、街中の地を這うカーチェイスの逃走劇としての高速の横移動と、森林・屋内・市街地での危機回避の脱出劇としての浮遊の縦移動が活劇として対比される。
ぽんしゅう

浸食と排除の象徴としての逃走と追跡は狂気的なスピードの横移動アクションとして描かれる。不寛容や束縛からの解放としての回避や避難は、脱重力(=脱速度)のゆったりとした縦移動アクションとして描かれる。 コルネル・ムンドルッツォ監督が神の啓示として示唆するのは、横移動から縦移動へ、すなわち二次元から三次元への発想の転換だ。

二次元の発想とは、解決の糸口の見えない白か黒かの二項対立の構図のことだ。そんな膠着状態も、状況を俯瞰して第三の視点を得ることで、今まで見えなかった糸口が見つかるのではないか。そんな三次元的の発想の効用を、このシリア青年(ジョンボル・イェゲル)の空中浮遊が象徴しているように見えた。

(評価:★4)

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