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[コメント] 幼な子われらに生まれ(2017/日)

世の中、本当は理屈では割り切れないことで成り立っている。「いつも理由は訊くけど、気持ちは訊かない」と元妻に詰問され絶句したこの男、人生は理屈でなんとかなると信じていたのだ。そんな男が、考えても答えのないこともあるとうい事実を知るまでの責苦物語。
ぽんしゅう

とは言え、自分の半生の選択を振り返って「あれも、これも、しなければよかった」と愚痴るこの元妻(寺島しのぶ)もまた、男(浅野忠信)と同じように人生は理屈でなんとかなると思っていたのだ。

それに比べ、同居する男が自分の母親(田中麗奈)を妊娠させたと知った娘(南沙良)の男性嫌悪は、生理的な牝の本能で理屈など微塵もないぶん絶対に揺るがない。また、この娘の男性不信のおおもとの原因である父親(宮藤官九郎)の家庭的なるものからの逃避の理屈のなさも筋金入りだ。

理屈を信じた者たちは、理屈ではない者たちの強固な壁の前で立ち尽くす。駄目な者たちの非理性パワーに圧倒される理性で武装した者たちの危うさ。これはまさに脚本家荒井晴彦が一貫して描いてきた主題。恐るべし全共闘世代の執念。

困惑、いらだち、放心する浅野忠信父さん。ご苦労、お察し申し上げます。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)緑雨[*] シーチキン[*]

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